「くちなし」(彩瀬まる)感想。高校生直木賞受賞に納得した理由とは?

評価:★★★★★

「好きなものに、触らないまま関わる方法は、きっとたくさんあるんだな」
(本文引用)
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 彩瀬まるさんの「くちなし」は、高校生直木賞受賞作。
 新聞等で高校生の意見を読んだところ、本作を偏愛している高校生が多い様子。
 
 「好みが分かれる作品だけど、私はこういう世界がとても好き」という、自分の感性を信じるピュアな感想が目立ちました。

 「誰が何と言おうと、私はこの小説が好き」・・・誰かにそう言わせる作品は、ぜひとも読みたいところ。

 なぜなら、「誰が何と言おうと、私はこの小説が好き」の「私」に、私が当てはまるかもしれないから。
 「私」に私が当てはまったらと思うと、読まないと一生損する気がします。


 
 というわけで、手に取ってみた「くちなし」。
 結論は・・・「読んで良かった」。
 そして高校生が言う通り、「好みが分かれそうだけど、私はこの物語、好きだな」としみじみと思いました。
 
 「くちなし」が、なぜ高校生直木賞を受賞したのか。
 そして「くちなし」は、なぜ周囲に抗ってまで高校生を引き付ける力があるのか。

 「くちなし」を読みながら、その理由を探ってみました。 
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■「くちなし」あらすじ



 ユマは、恋人のアツタに別れ話を切り出されます。
 
 恋人同士とはいえ、ユマとアツタは不倫の仲。
 ユマは涙を流して拒みますが、「妻」という言葉を出されると従わないわけにはいきません。
 
 アツタは罪滅ぼしに、ユマに何かを贈りたいと言います。
 そこでユマが希望したものは、アツタの腕。

 ユマはアツタの左腕をもらい、蜜月時代を思い出します。

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 ある日、ユマのもとに一人の女性が現れます。
 女性は言います。
 

「主人の腕を返して下さい」


  ユマはアツタの腕を返す代わりに、あるものを要求しますが・・・?
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■「くちなし」感想



 「くちなし」が高校生に受け入れられた理由。

 それは、本書は「私が今、胸をときめかせている思いは本当の恋なの?」という疑問に応えてくれるからです。

 高校生ぐらいの年頃って、誰かを好きになっても、それが恋かどうかわからない場合が多いです。

 本当にその人のことが好きなのか。
 その人のことが好きという状態が好き・・・いわば「恋に恋してる」だけなのか。

 自分は真剣なのに、大人から「恋愛ごっこ」のように言われ、納得のいかない思いをしている高校生も多いと思います。

 「くちなし」に収められた7編は、そんなゆらぐ高校生に答をくれる物語。

 自分の今の胸焦がす思いは「本当の恋と言えるのか」を、スッキリと示してくれます。

 7編のなかでも、最も面白いのは第3話。(※あえてタイトルは書きません)
 
 主人公のミネオカは、初恋の男性トキワと久々の再会をします。
 ミネオカはトキワに対し、再度ささやかなときめきを感じますが、トキワには意中の人が。

 トキワの好きな人は、既婚の子持ち女性。
 ミネオカは、やや納得いかない思いをしながら、トキワの恋を見守ります。

 トキワは、好きな女性に声もかけることなく、ある形で思いを表現しますが・・・?

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 「くちなし」は全編、かなり奇妙な形で恋心・愛情・憎悪を描いていますが、この第3話は非常に爽やか。
 高校生も第3話を読めば、今の気持ちが本当の恋か否かわかるのではないでしょうか。

 トキワのような伝え方・思いのこめ方ができたら、それはたぶん本当の恋。
 たとえ実らなくても、人生の糧になる素晴らしい恋をしていると、胸を張って言えるでしょう。

 「くちなし」が高校生直木賞を受賞したのは、「自分の人生に本当に必要なものを教えてくれる」と、多くの高校生が感じたからではないでしょうか。

 誰かを好きになる、愛するということは、いったいどういうものなのか。
 自分が今、抱えている思いは「本当の恋」と言えるのか。
 この恋をどのように昇華させれば、相手も自分も幸せになれるのか。

 「くちなし」を通して好きな相手を見つめれば、両想いでも片想いでも、後悔のない、心から満たされた恋ができますよ。
 
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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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