「私って何?」と思ったらおすすめ!「私はすでに死んでいる」~ゆがんだ<自己>を生み出す脳~ 感想。

評価:★★★★★

切断手術に後悔は微塵もない。人生で初めて、自分が完全にまとまった存在になれたとデヴィッドは返事をくれた。
(本文引用)
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 「ゲスの極み乙女。」のヒット曲「私以外私じゃないの」。

 確かにそうなのですが、よく考えると、そもそも「私って何?」って思いますよね。

 話す自分、歩く自分、食べる自分、考える自分・・・どれもこれも、ふと「私のようで私ではない。でもやっぱり私がやっていることなのだ」と不思議な思いに駆られることがあります。

 でも何かを食べれば「おいしい」と思い、誰かに会えば心が弾み、何かに対し怒りを感じたり泣いたりする・・・。
 私が何かを食べて、他人が「おいしい」と言うわけではないのですから、やっぱり「私以外私じゃないの」としか言いようがないんでしょうね。



 でもやっぱり不思議な「私」という感覚。

 どうにも「私って何?」という疑問が頭をもたげるのなら、本書を読んで損はなし。
 
 「自己の確立」と戦う記録を読めば、「私以外私じゃないの」と納得できるヒントを得られますよ。
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 「私はすでに死んでいる」に登場する患者は、皆「頭と体がバラバラ」「自分で自分がわからない」といった人たちです。

 他人から見ればどう考えても生きているのに、「私は死んでいる」と主張して譲らない人。
 アルツハイマー型認知症で、自分の歴史が徐々に消えていく人。
 他人の心を読むことができないとされる情緒障害。
 自分の行動が自分のものと思えない離人症・・・。
 
 なかでも最も衝撃的なのは、「自分の足がいらない男」。
 自分の脚が二本あることで、自己に絶望しつづけた人の症例です。

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 デヴィッドは幼少期から、「自分の脚を片方切り落としたい」という強迫観念にとりつかれています。
 彼の病名は「身体完全同一性障害」。
 五体満足であることが許せないという病気です。

 デヴィッドは手足が全てそろっていることに苦しみ続け、手や足をきつくしばって壊死させようとしますが、ことごとく失敗。

 四肢がそろっている苦しみを、親友や妻にカミングアウトします。
 
 その後、インターネットなどを通じて「脚を切り落としたいと思っている人間は自分だけではない」と知り、切断手術を決意。

 デヴィッドは脚を一本切り落としたことで、やっと「自分が自分になれた」と大喜び。
 ようやく心の平穏を得るのです。

 このデヴィッドの症例は、本書のなかでも群を抜いてインパクトのあるものですが・・・どこか「突き放してはいけないもの」を感じます。

 なぜなら私たちも、(自分の脚を切り落とさないまでも)自己の確立に悶絶するほど苦しむ可能性があるからです。

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 アルツハイマー型認知症は自分の歴史が消えていくことで、自己と他人の認識が薄らいでいきます。
 またリストカットや引きこもり、家にゴミを大量に持ち帰りゴミ屋敷にしてしまうことも、「自己の確立に苦しんでいる」「私が私でいるという実感がなく、それを確かめたくて悶えている」状態といえます。
 
 体の切断というのは、確かにかなりレアなケースでしょう。

 でも「私」を取り戻すために要する行動・準備がだいそれたものか否か、それしか違いがないような気がします。

 「私って何?」と思ったら、ぜひデヴィッドの症例を読んでみてください。

 思わず目をそらしたくなるかもしれませんが、「ああ、私は私って思える所以って、そういうものかもしれないなぁ」と納得できますよ。
 
 最初は、正直に言って興味本位で読んだ「私はすでに死んでいる」。
 様々な驚きの症例に心臓がバクバクギュウウッとしましたが、いつの間にか患者の皆さんに「だからあなたはあなたって言えるのよ」と教えられている気が・・・。

 目をむくような内容とは裏腹に、読めば読むほど心が凪いでいきました。
 
 本書を通じて「私は私」と、安心できたせいかもしれません。

 「私って何?」という哲学的な問いを、科学の目からスパッと解決する「私はすでに死んでいる」。

 今、動かしている体や発している言葉が、「確かに私のものだ」と心の底から思える精神安定剤的一冊です。 

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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