「シリアの秘密図書館」感想。読書こそが真の革命を起こす!

評価:★★★★★

「でも、インクを大量に飲んだ川の水は色が変わったといわれています」
(本文引用)
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 米英仏がシリアを攻撃するなか、最近、シリアを舞台とした本や映画が数多く世に出ています。
 
 「シリアの秘密図書館」も、今のシリアを伝える一冊。
 
 朝日小学生新聞で紹介されていたので読んでみたのですが・・・革命とは、独裁政治を変えるとは、かくも難しいことなのかと歯噛みする思いで読みました。

 暴力に対し暴力で答えれば、手っ取り早く解決するのかもしれません。
 でも暴力で対抗したのでは、相手と同じ土俵に上がるのと同じ。

 暴力を鎮め、本当の意味で世の中を変えていくには、暴力で訴えてはいけないのです。



 その最良の手段は「読書」。

 本を読むことで多種多様な考えや疑問をもつことが、平和への確実な道なのです。

 本書「シリアの秘密図書館」は、読書を通じて独裁政治を変えていく小さな一歩をつづった本。

 時間はかかっても、暴力ではなく「知」で世の中を変えていくことが、未来にとってどれだけ大切であるかがわかります。
 同時に、人々の思考力が塞がれた「独裁政治」というものが、どれだけしぶといかもわかります。
 悲しいことですが・・・。
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■「シリアの秘密図書館」概要



 舞台はシリアの町・ダラヤ。

 ダラヤは政府軍に包囲され、常に死と暴力にさらされ、物資も不足するという過酷な状況にあります。

 毎日落とされる何百発もの爆撃。
 人々はもはや、暴力にも独裁にもマヒしています。

 そんなある日、一人の若者がこんな依頼をしてきます。 

崩れ落ちた家の下に本を見つけて、それをどうしても掘り出したい。


 依頼を受けた青年アフマドは、しぶしぶ本を掘り起こしますが、そこでページを開いた瞬間、身体全体が震えるのを感じます。

 それは、自由への震え。

 アフマドたちは、本こそが自由・平和への扉であると確信し、図書館づくりを始めます。

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■「シリアの秘密図書館」感想



 「シリアの秘密図書館」を読み、私はある一冊の本を思い出しました。

 それは「テヘランでロリータを読む」
 
 束縛された環境のなかで、女性たちが本を読むことで、他者への共感・外界の想像をすることの楽しさを見出していく本です。
 
 「シリアの秘密図書館」も、読書の楽しさを通じて、人間らしさを取り戻そうとする本。
 
 独裁政治に疑問を持つことなく従ったり、逆に政府に対し非道な暴力で訴えたりするのを、読書によって踏みとどまる様子が濃密に描かれています。

 彼らは隠された過去を知るために読む。学ぶために、正気を保つために、逃げ出すために読む。本は、はけ口であり、押し付けられる爆弾に対抗する言葉のメロディーだ。読書、このなんということのない行動が、彼らをいつかは平和が戻るという希望につなぎ止めている。


 図書館づくりに携わった人々の思いで、最も印象的なのは「正気を保つため」という言葉です。

 彼らの読書の目的は、何よりもまず「人間でありつづけるため」。
 
 独裁政権に対し、怒りに任せてテロ行為に走るのではなく、血を流さず、誰も傷つけることなく革命を起こす。

 どんなにギリギリの状況になっても「人間でありつづける」ために、彼らは本を読み続けたのです。

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 数時間後には死体となるかもしれない状況下で、ここまで冷静な心の営みがあったこと、そして希望を捨てず、未来につながる活動を粛々と続ける人がいたこと・・・その事実に、私は全身が震えました。

 本書の結末は、なかなか夢物語のようなわけにはいきません。

 ここまでこじれた内戦を、読書の力で完全に押さえるというのは、やはり相当な時間を要するようです。

 でも、本で得られた知や思想は、どんな独裁者にも奪うことはできません。

 まだ平和への道のりは険しいですが、アフマドのこの言葉に望みをかけて、シリアの様子を見守っていきたいと思います。

 「町を破壊することはできるかもしれない、でも考えを破壊することはできない」




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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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