「読み返す楽しさ」、詰まってます。「悪いものが、来ませんように」芦沢央

評価:★★★★☆

「娘は、母を許さなくていいの」
嫌ってもいい、憎んでもいいから、幸せになってほしい。

(本文引用)
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 「悪いものが、来ませんように」は「読み返したくなる度99%」。

 「絶対、ぜったいだまされて読み返します!」という帯のコピーに惹かれて、「私は読み返さないぞ!」と気合を入れて読みましたが・・・これ、読み返すなっていう方が無理です。

 脊髄反射並に、「思わず」読み返します。

 膝の下をコンッと突かれて、足がピョンッと跳ねるような・・・それぐらい当然のごとく読み返しちゃいます。

 読み返すということを忘れて読み返し、「あれ? 私読み返してる?」と後から気づくぐらい。



 では、なぜ「悪いものが、来ませんように」は「つい」読み返してしまう本なのか。
 
 そして「読み返してしまう本」は、なぜ「面白い」と感じられるのか。

 あらすじと共に、理由をお伝えしていきますね。 
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■「悪いものが、来ませんように」あらすじ



 育児真っ最中の奈津子は、母親と夫からプレッシャーをかけられる日々。

 うつぶせ寝にさせていないか、やっぱり布オムツを使えば良かったのではないか・・・。

 母親と夫両方に、育児について口を出されヘトヘトの毎日を過ごしていました。

 奈津子の心の支えは、助産院に勤める紗英。
 紗英は奈津子とは逆に、子どもがいないために悩んでいます。

 子どものことが常に気にかかる奈津子と、子どもがいないことで疲弊する紗英。
 逆の立場で悩んでおり、一見相容れないように見えますが、二人は常に意気投合。

 幼い頃から常に一緒だったこともあり、互いに愚痴を言い合うなど気の置けない関係を続けます。

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 しかし奈津子は、紗英が大好きなあまり、紗英の夫・大志を殺害。

 大志は浮気を続けるなど、紗英を傷つけてばかり。

 奈津子は、そんな大志を許せなくなり殺人と死体遺棄を遂行します。

 さて、奈津子は凶行を隠し通せるのでしょうか?
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■「悪いものが、来ませんように」感想



  「悪いものが、来ませんように」は、なぜ読み返したくなるのか。

 その理由は、ヒント・伏線が巧みに隠され、種明かしまでの流れがあまりにスムーズだから。
 騙されたことに気づかないぐらい自然と騙されてしまい、そんな「自然に騙されてしまった自分」に唖然愕然呆然としてしまうからです。

 人間は事態が瞬時に飲み込めないと、とっさに確認行動に出てしまうもの。
 「悪いものが、来ませんように」は、ヒントが保護色のように自然に隠されているので、騙されたことが分かった瞬間、思考が0.2秒ほどフリーズ。
 
 その後、「そんなバカな!」とつい確認したくなってしまいました。
 この「驚愕→思考停止→確認」のプロセスを、本書は見事に踏ませてくれます。
 だから思わず読み返してしまうんです。

 そして「読み返したくなる本」は、なぜ面白いのか。

 理由は、主に二つ。

 一つは「あちこちに散りばめられたヒント・伏線」を見つけ、「これかぁ!」と膝を打てるから。

 そしてもう一つは、「どうして自分は騙されてしまったのか」という「自分の落ち度」を知ることができるからです。
 
 読み返すことで、ヒントや伏線を見つける楽しさは誰もが想像できるでしょう。
 歩いてきた道をもう一度戻って、道路の隅や植え込みにキラッと光る「真相の破片」を見つけ出すのですから、面白くないわけがありません。

 ではもう一つの理由、「自分の落ち度を知ること」がなぜ楽しいか。

 それは自分の中にある「イメージの固定観念」を知ることができるからです。

 イメージの固定観念とは、たとえば「タクシーの運転手が、看護師さんから婚約指輪をもらう」という状況などがわかりやすいかな?
 あるいは、「横断歩道で歩行者側の信号が青になった途端に、ダンプの運転手が全速力で走り出した」とか。

 「悪いものが、来ませんように」は、自分の中で勝手に作り上げた「イメージ」で、見事に騙されます。
 そして、自分の中で勝手に作り上げたイメージにより騙されたことで、自分を壊すことができます。

 本書を読んで痛感したのですが、自分を壊すってものすごく快感なんですね。

 「なぜ私は、こういう言葉に、こういうイメージを抱いているのだろう」
 「なぜ私は、こういう会話から、彼らの相関関係を決めつけてしまったのだろう」

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 自分の人生まで振り返り、「私の中でなぜこのような固定観念が構築されてしまったのか」を、うんうんと考え込んでしまいます。

 だからこそ、本書のような「読み返し本」はたまらない!
 固定観念を壊されたおかげで、ちょっと自分がブラッシュアップできたような気がします。
 そんじょそこらの自己啓発本よりも、自分を高められたかも!?

 何だか面倒な理屈を色々こねくり回してしまいましたが、とりあえず本書をお手に取ってみてください。
 「読み返さなくちゃ!」と思うより前に、いつの間にか読み返している自分に「ハッ」と驚いちゃいますよ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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