湊かなえ「物語のおわり」ってこういう意味だったんだ!登場人物と読者がコラボする奇跡の小説です。

評価:★★★★★

山を越えても、その先にはまだ砦がある。日本の最果てまで来ても、砦はある。逃げ出すことはできないんだから、その中で戦いなさい。
(本文引用)
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 「短編集はこうでなくっちゃ!」
 ページをめくりながら、私は思わずガッツポーズ。

 短編集は、一話一話が完全に独立しているものも面白いですが、全てが絶妙につながっていると面白さ倍増ですよね。

 その意味で、「物語のおわり」の読み応え・面白さはパーフェクト。
 連作短編集というものを越え、さらにハイレベルな「入れ子構造」にグレードアップ。

 どこまでが本当で、どこからが嘘かわからないんだけど、全てを覆っているのは真実。
 そして、入れ子の最後の箱を開けてみると、そこにあるのも真実。



 「すっかり騙された!」という痛快さと、「本当に大切なものを見つけられた」という爽快感が心の中をフワーッと駆け抜けます。

 しかも「物語のおわり」は、ある意味「登場人物と読者がコラボする」小説。

 湊かなえさんの構成力には、ただただ脱帽です。 
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■「物語のおわり」あらすじ



 本書は8編からなる短編集。

 第一話は、小説家を目指す少女のお話です。

 主人公・絵美の実家はパン屋さん。
 絵美は毎朝、学校に行く前にお店を手伝いますが、そこで釣銭を少なく渡してしまうトラブルが。

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 相手は男子高校生で、いつもハムサンドやハムロールを購入。
 絵美が密かに「ハムさん」と呼ぶお客さんです。

 絵美はハムさんに釣銭を渡すため、ハムさんが降りるバス停で待機。
 それ以来、二人は頻繁に会うようになり、愛情を深めていきますが・・・?

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■「物語のおわり」感想



 「物語のおわり」というタイトルと、「湊かなえ作品」であることから、多くの人はこんなイメージを持つのではないでしょうか。

 「ふっふっふ、ここからはあなたが考えてね」という、挑戦的かつ不穏な空気を。

 もし、そんな物語を想像しているのなら、読んで驚くこと必至。

 「あ、物語のおわりってこういう意味だったの? やられた!」と膝を打つこと間違いなしです。

 「物語のおわり」を考えるのは、次々と現れる登場人物たち。

 彼らにはある共通点があるために、物語をバトンリレーのように渡され、人生そのもので「おわり」を考えるよう託されます。

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 「えっ? じゃあ我々読者は読むだけってこと? 何もすることないの?」

 そうつまらなく思う人も、いるかもしれません。

 でも読むうちに、読み手も物語を渡され、自分自身で「おわり」を考えるよう任されていることに気づきます。

 作中、ある人物がこんな言葉を胸の内につぶやきます。 

絵美と自分が人生の一点で交わったことは間違いではなかったのだ

 登場人物だけでなく、きっと読者も「絵美との交叉」には胸が震えることでしょう。

 夢か現かわからないけど、とにかく絵美と会えて良かった、絵美と人生の一点で交わった「彼ら」と会えて良かったと、心から思えることでしょう。

 そんな「人と人、夢と現実の交叉」が本書の魅力。

 微妙に異なる物語で、違う人物が、いつかどこかで重なり合う。
 「物語のおわり」は、そんな短編集の醍醐味がとくと味わえる小説です。

 しかもその「人物たち」に読者まで巻き込んでしまうのですから、湊かなえさんの筆力・構成力・アイデア力には舌を巻きます。

 「面白い短編集はないかな~」とお思いなら、今いちばん推したいのは「物語のおわり」。

 短編集の魅力に、頭のてっぺんから足の先までつかることができますよ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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