吉田タカコ著「子どもと性被害」 性虐待、被害者のためにできること、被害者を増やさないためにできることとは?

評価:★★★★★

「加害者にやさしい社会」は、もうやめるべきだ。
(本文引用)
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 子ども時代に性被害に遭うことが、これほどまでに人生を狂わせ、苦しめるとは思いませんでした。

 今すぐ、1人ひとりを抱きしめて「辛かったね。苦しかったね。あなたは絶対に悪くない」と伝えたくなります。

 でも、第三者である私がそんなことを言ってはいけないような気もします。

 心のどこかに「私があなたでなくてよかった」と思っているのではないか。
 心のどこかで、被害者に対する好奇の目があるのではないか。
 小さな言葉ひとつが、被害者をさらに痛めつけてしまうのではないか。


 
 そう自問すればするほど、やはり「苦しんだ本人」に安易に声をかけてはいけない気がします。

 ならば、どうすればよいか。
 私にできることは、本書のような本を読み、性的虐待の残酷さ、被害者の気持ち、加害者の心に潜む問題点、そして性的虐待を生んでしまう社会構造をじっくり学ぶことです。

 今現在、性的虐待に苦しめられている子どもたちがいることでしょう。
 夜が来るのが恐ろしい、「あの人」の足音が聞こえるのが恐ろしいと、震えている子どもたちがきっといるのです。

 そして、かつて性的虐待に苦しめられ、自分という人間を肯定することができず、息を潜めて暮らす大人もたくさんいるのです。
 
 私は直接、そんな人たちを救うことはできません。
 でも一歩一歩でも「性的虐待のない社会づくり」に寄与できれば・・・「子どもと性被害」は、心からそう思わせてくれる一冊です。

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■「子どもと性被害」概要



 本書は、まず性的虐待の実例から入ります。
 被害者は多くは女子で、加害者は叔父や実父。
 
 しかしなかには、神父から性的虐待を受け続けた男子の例も紹介されています。

 本書ではそれらの実例から、性的虐待を止めきれない原因や、被害者の後遺症、被害者がさらに傷つく周囲の言動などを緻密に分析。

 そこから炙り出されるのは、被害者の母親等、周囲の無理解の残酷さです。

 深く傷つけられ、苦しみながらも生き続ける「性的虐待のサバイバー」たちは、何を本当に求め、何によって救われるのか。

 著者は、当事者たちの「小さな声」を丁寧にすくいあげながら、具体的な取組みを多数紹介。

 「性的虐待撲滅」に必要なことを、様々な角度から説いていきます。

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■「子どもと性被害」感想



 本書を読み、最も胸に刻まれること。

 それは、当事者にしかわかり得ない「心の傷をえぐるきっかけ」があることです。

 たとえば最も驚いたのが、他人が何気なく使っている言葉が、被害者を追い詰めるという事実です。

 支援活動に燃える人たちが、「泣き寝入りしない」とか「一生消えない傷を負わされたことを許してはならない」と声高に訴えることがよくある。気持ちはわかるのだが、このような活動は、時としてサバイバー本人の気持ちから離れ、独り歩きしたものとなりがちだ。
 サバイバーの中には「泣き寝入り」ということばを不快に感じる人が少なくない。まるで、加害者ではなく、訴えないサバイバーの弱さだけが責められているように聞こえるからだ。サバイバーは、弱いから泣き寝入りしているのではなく、社会が沈黙を強いているために泣き寝入り“させられて”いるのである。
 「一生消えない傷」かどうかも、判断するのはサバイバー本人であって、他人にいわれる筋合いはない。「一生消えない傷」という表現は、「傷ものにされた」とか「被害者に未来はない」といっているように聞こえるのである。


 この解説に、驚く人は多いのではないでしょうか。
 実際、私は驚くとともに、自分の想像力のなさにうなだれました。 

 他人が正義感に燃えて使っている言葉が、当事者をさらに不快にさせている可能性がある--それに気づかせてくれる点に、本書の価値はあります。
 
 性的被害は、他の犯罪と異なり、どうしても隠されがち。
 そのため、なかなか周囲の理解が広まらず、被害者はますます追い詰められてしまいます。
 
 だからこそ、本書は必読。
 被害者たちが胸にしまっていた「小さな声」を、一つも漏らすものかとばかりに、丁寧に丁寧に集め、明かしていく-それがどれだけ被害者の心を救い、今後の性的虐待撲滅につながっていくかが、本書を読むとわかってきます。

 その他、男性が早くから育児参加の意識を持つことが、性的虐待を防ぐとの指摘には納得。

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 本書では性的虐待の連鎖を止め、なくしていくためには、人間の成長過程でどのような取組みが必要なのかが、高い説得力とともに解説されています。

 うちの子も最近、学校で性教育が始まっているようです。

 私とは世代が違うため、正直戸惑うことがあります。

 でもまっすぐ正面から向き合うことが必要なんですね・・・本書を読み、親としておおいに反省させられました。
 
 大人になってから受けた性暴力以上に、人生に大きな影響を与える「子どもへの性暴力」。

 本書を読み、実態や被害者・加害者の心の声、科学的根拠や事実に裏づけられた取組みを知ることで、子どもを守る社会に大きく踏み出せた気がします(まだまだ甘いかもしれませんが)。
  
 小さな子どもをもつ、いち保護者として、心から「読んで良かった」と思える一冊でした。

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アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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