どんでん返しを満喫したいなら貫井徳郎「崩れる」がおすすめ!

評価:★★★★★

 芳恵が漏らした言葉は「ああさっぱりした」というものだった。それは結婚以来、芳恵が初めて口にした台詞だった。
(表題作「崩れる」より引用)
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 無性に「どんでん返し」の小説が読みたくなる時って、ありますよね。

 貫井徳郎さんの「崩れる」は、そんな「どんでん返し読みたい病」の方にホントーーーーにおすすめの一冊!

 何しろ短編集なので、ハイレベルのどんでん返しを一気に8回も(!!)味わえちゃうんですよ。

 「どんでん返し」好きな方は「長編でないと読む気がしない」方もいらっしゃるかもしれませんね。
 
 確かに、ラストまで引っ張って引っ張って引っ張りまくった方が、よりどんでん返しの魅力が増すような気がしますものね。

 でもこの「崩れる」を読めば、そんな固定観念は吹き飛びますよ。



 1篇1篇が非常にレベルが高く、ショートストーリーということを完全に忘れて読みふけってしまいます。

 恐怖、怯え、迷い、憎悪・・・その先にあるのは果たして、安堵なのか喜びなのか、さらなる地獄なのか。

 ラストで胃がひっくり返るか、ひっくり返っていた胃がホッと収まるか。

 お正月でボンヤリとした頭を、読書で一撃したい方はぜひどうぞ。

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■「崩れる」あらすじ



 本書は8編からなる短編集。
 全て「結婚」にまつわる物語です。

 表題作「崩れる」は、タイトル通り結婚生活が崩れていく物語。

 主人公の芳恵は、「結婚生活、こんなはずじゃなかった」と日々嘆いています。

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 画家だった夫はルーズな性格故仕事を失い、今はほとんど仕事をせず家でゴロゴロ。
 妻の芳恵が働きづめで働き、ギリギリで生活を保っています。

 息子の義弘は、母親に辛い思いをさせる父親に腹を立て、毎日のように大ゲンカが勃発。

 そしてついに、本当に「崩れる」日がやってきます。

 第2話「怯える」は、ある新婚夫婦の物語。
 主人公・哲治のもとに、ある日、かつての恋人・沙紀から電話が来ます。

 沙紀は浮き沈みの激しい性格で、哲治はとうとう付き合っていられなくなり破局。

 その後、沙紀も結婚したと聞き安心した哲治ですが、またもや連絡がきたことで頭を悩ませます。

 しかも沙紀は、哲治が会社に行っている間、自宅に電話をかけている様子。
 哲治は沙紀と完全に決別すべく行動を起こしますが・・・?
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■「崩れる」感想



 本書に収められている物語は、「崩れる」が大好評だったため、続々と作られたとか。

 確かに第1話「崩れる」の、読者をつかんで離さない握力は尋常ではありません。
 夫の徹底したクズっぷり、体全体がボロボロになりそうな、妻のストレス。良識を持ち合わせた息子の爆発。
 いずれも、凄まじい臨場感と迫力で描かれており、読んでいるだけで脳の中心がしびれてきます。

 今、ゴロゴロ夫に不満を持っている方は、テーブルの上に本書を置いてみてはいかがでしょうか。
 万が一、旦那さんが手に取ってくれたら・・・翌日には人が変わったように家事を率先してやるようになりますよ。

 他、個人的に好きな物語は、第2話「怯える」と第4話「追われる」。

 「怯える」はストーリーについては前述しましたが、どんでん返しが最も楽しめる一遍。

 ややネタバレすると、本書のなかで唯一「救いのある」物語といえます。
 この一遍があるから、「崩れる」はグロテスクなわりに上品な一冊となっています。
 
 相手が嫌いではないけれど、何となく夫婦の危機を感じているという方に、「怯える」はおすすめです。
 朝読めば夕方、夜読めば翌朝には仲良し夫婦になれますよ(^^)

 そしてちょっとひねりの効いた「追われる」。
 こちらは、「結婚したい人」が登場する物語です。

 主人公の千秋は、結婚相談所でカウンセラーをする女性。
 男性会員と模擬デートをして、女性との付き合い方を教える仕事をしています。

 千秋は片桐という会員と模擬デートをしますが、どうやら片桐は千秋に恋心を持ってしまった様子。
 
 仕事上、会員と恋愛関係に陥るのは禁止されているため、千秋は片桐から必死に離れるようにします。

 ところが片桐の行動は次第にエスカレート。
 完全にストーカーに変身。
 千秋は友人の力を借り、片桐を追い払う作戦に出ますが・・・?

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 「追われる」は本書の中で、ある意味「最も恐ろしい」一遍。
 
 貫井徳郎さんの小説って、まわりまわってやってくる「しっぺ返し」が魅力ですよね(「乱反射」などはもう、ひたすら唸らされます。)

 この「追われる」は、そんな貫井節が炸裂。
 第5話「壊れる」と併せ、貫井流「必殺・乱反射しっぺ返し」を味わってみてください。

 「ミステリーって本当に面白ーい!」っと、頭の中がまるごとモミモミーッとほぐされるのが実感できますよ。
 
 一冊で8度おいしい「崩れる」。
 どんでん返し好きな方、育児や結婚生活で悩んでいる方、なかなか新年の読書スタートを切れない方におすすめです。

 巻末の、貫井さんによる解説も必読です。(※文庫本収録)

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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