セクハラ防止にこの一冊!加害者たちの心理が恐ろしいほどわかります。「壊れる男たち ~セクハラはなぜ繰り返されるのか~」金子雅臣。

評価:★★★★★

 こんな岩盤のように強固な「女というものは・・・・・・」「女のくせに・・・・・・」がいろんな事件の背景になっていて、そのことを信じて疑わない加害者が繰り返し現れる。この土台になっている頑固な考え方には、一体、どんな言い方をすればひびを入れることができるのだろうか。
(本文引用)
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 今年一番、いえ、今まで読んだ本のなかでも一、二を争うほど衝撃を受けた本です。

 2017年は、今まで隠されていたセクハラ問題・事件が一気に噴出した年でした。
 そして明かされた事件はどれも、この「壊れる男たち」で紹介されている事例と、非常に共通点の多いものでした。
 

繰り返される事件を見ていると、ある種の権限をもっていたり、それなりの立場にある加害者男性が、その権限や立場に慣れすぎてあまりにも自覚がないと思われることが多い。



 

だから平気で相手の意思を無視したり、被害者女性が拒否することのできない弱い立場にあるということも、同じように忘れてしまっている。


 そう!そう!そうなんです!
 今年噴出した一連のセクハラ事件も、本書で紹介されている、読むだけで背筋が凍るようなセクハラ事件も、男性が高い立場・権力を持っていることに恐ろしく無自覚。
 
 それゆえ、「仕事の話なんだけど・・・」などと声をかけられた女性は「上司が仕事で呼んでいる。行かなくちゃ」と思い込み、まんまと罠にかかることに。

 非常に不愉快な思いをしても、「採用でお世話になったから無下にできない」「この人に嫌われたら、仕事を辞めて子どもを育てられなくなる」とジワジワと追い詰められ、取り返しのつかないことに発展します。

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 仕事上、不都合な立場に追いやってセクハラをすることを「対価型」と言いますが、本書によると、実は男性側は「対価型」とも「自分の立場を利用している」とも何とも思っていないんです。
 
 これに、まず非常に驚きました。

 ・初めて見た時から、「いいな」と思っていた。
 ・離婚しているから、寂しいはず。

 などという、ただの性的衝動と差別意識からセクハラを起こしているんです。

 本書を読めば、「女性が誘っているのではないか」なんて言えなくなります。

 また、「もしあなたの娘さんが同じ目にあったらどう思うのですか?」という批判が全く意味がないこともわかります。

 なぜならセクハラ加害者のなかには、「娘が家を出てしまった。そこに娘と同じぐらいの年齢の派遣社員が入り、可愛くて・・・」「うちの娘も君ぐらい素直ならいいんだが・・・」「娘のように思っているから、あそこでとどまった」(!)などと言いながら、口に出すのも恥ずかしいほどのセクハラをする輩もいるんです。

 これには心底ゾッとしました。

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 でも私の身近にいる男性は、セクハラなど起こしそうもない人ばかり。
 起こすどころか、男性による女性差別に対して本気で憤りを感じている人ばかりです。

 たいていの男性はまともだと思うのですが・・・セクハラをする人としない人の違いはいったい何なのでしょうか。

 本書はセクハラ加害者の驚くべき思考回路と、解決までのプロセス、そしてセクハラの温床となる思想や社会まで徹底解説していきます。

 これは本当に、読んで損はない一冊。
 女性も男性も必読の良書です。
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 著者の金子雅臣氏は、労働問題を扱うジャーナリスト。
 ホームレスやパワハラについての著書も出されています。

 本書はタイトルどおり「セクハラ」をテーマにしているわけですが、まず、その実録ぶりがすごい!
 「セクハラとは云々」とただ定義や対策を述べる「机上の空論」的な本とは、完全に一線を画す内容です。

 本書の特徴は、事例が豊富に紹介されていることですが、これだけ事例が多いのに共通点が1つに絞られるのがまた、興味深いところ。

 セクハラ加害者たちの言い訳が、まるで申し合わせたように同じなんです。

 

 「男と女の駆け引きのようなもので・・・・・・」

 

「よくあるじゃないですか。何となく誘って、喜んでついてきたという感じですけど・・・・・・」

 

「ああ、そういえばそのとき涙ぐんでいたことはありましたが、それはああしたシチュエーションでは女性にはありがちなことですよね」

 

「あの女は被害者意識が強い」

 

「彼女は拒否の態度を取ってはいたが、本当は受け入れの態度、つまり、何と言ったらいいか、本当の拒否じゃなかったのですよ」

 

「彼女だってその気になっていたはずですよ」


 明らかに刑事犯罪といえる行為をしておきながら、このセリフ。
 著者が、いくら被害者の涙ながらの訴えを伝えても、終始この調子なのです。

 著者曰く「盗人猛猛しい」とのことですが、まさにその通り。
 多くの取材を重ねている著者ですら、「いったいどうすれば彼らは自分の行ない・非道を理解できるのか」に頭を悩ませます。

 私も読みながら、「これはもはや理解不能。こっちも理解できないし、あっちも決して理解することはないだろう」と匙を投げたくなりました。

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 とにかくセクハラ加害者に共通しているのは、他人に対する共感力が恐ろしく低いこと。
 他人がどう思うかが全く想像できず、全て自分に都合のよい解釈をして世の中を渡っている人たちなんです。

 本書を読むと、セクハラの重大な加害者を説得・更生することは無理なのだ、と落胆させられます。
 
 しかも彼らは「強姦既遂」でない限り、全く何もしていないのと同じと思っている様子。
 本書を読むかぎり、こういうセクハラ加害者は、いくら殴られようと刺されようと、直接心臓が止まりさえしなければ無傷と同じと考えているようなんです。
 
 とんでもない基準ですよね・・・。

 こう書くと、センセーショナルな犯罪の実態ばかりが書かれている本に見えますが、後半ではしっかりと「セクハラの病理・セクハラを産む社会・思想」に言及。

 著者はセクハラを、「女性問題」でなく「男性問題」と考えるべきと強く主張します。

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 たとえばセクハラをはじめ性犯罪は、女性に説明責任を求める場合が多いです。
 
 著者はその風習に、真っ向から反論。

 そもそも被害者である女性に、加害者の衝動について説明を求めること自体がスジ違いなのだ。

 「仕掛けられる」被害者でしかない女性の側に説明責任を問うこと自体が、本末転倒と言わなければならない。説明責任はあくまで「仕掛ける側」にあり、加害者である男性が考えなければならない“男性問題”なのである。


 性被害が起きた原因・状況説明などの責任まで女性が負うことは、社会が男性優位に働いていることの証左です。

 著者は、そんな「男性側の甘え」を絶つべき!とし、セクハラを「男性問題」として真剣に考えるよう、男性たちに主張。

 男性の性衝動について、「女性が誘ったから」と考えるのではなく、男として「自分たちはなぜそのような衝動を起こしてしまうのか」を根っこから考えることで、セクハラは抑止できる。

 そう著者は語ります。

 この本が出たのは2006年。
 それから11年以上経った今、ようやく「男性優位思想」が根源にあるセクハラが少しずつ浮き彫りになっています。

 相変わらず、女性ばかりが説明責任を負う状況にはなっているようですが、本書を読めばきっと、「Me too」と男性と女性が協力しあって声をあげたくなることでしょう。

 セクシャル・ハラスメントを通じ、性について大きく舵を切ろうとしている今。
 「壊れる男たち」は必読の一冊です。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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