「死」を選べることは最高の人権かも。「安楽死で死なせて下さい」橋田壽賀子

評価:★★★★☆

 患者の尊厳を守ろうとするお医者さまほど、責任を問われたり犯罪者になってしまうのでは、やはりおかしい。医師としての良心からの行為を犯罪にしない社会に、変えていかなければなりません。
(本文引用)
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 今、「いかにして死ぬか」を考える機運が高まっています。

 「周囲に迷惑をかけてまで、これ以上生きていたくない」
 「自分らしい死に方をしたい」

 という願望が強まっているようです。

 死に方を考えるのは、高齢者だけではありません。

 若くして他界した女性キャスターの方が、闘病記をブログに綴りつづけ、おおいに反響を呼びました。

 彼女のブログは「いかにして死ぬか」と「いかにして生きるか」を同時に考えさせるものでした。
 そこに横たわっていたのは、「世界中に一人しかいない、自分という人間の尊厳」といえるでしょう。




 「死ぬこと」を真剣に考えること、そして「死に方」を自分で選べることは、「生き方」に向きあうこと。

 「死ぬ権利」は、究極の人権なのかもしれません。

 橋田壽賀子さんの「安楽死で死なせて下さい」は、そんな「究極の人権」について書かれた本。

 世の中を変えたい・・・と訴えているわけではありませんが、「もっと死について考えてみませんか?」と訴えています。
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■「安楽死で死なせて下さい」概要



 本書は、橋田壽賀子さんの半生記から入ります。
 
 戦争を経験し、女子大に入り、役者を目指し早稲田大学に編入し、気がつけば松竹初のシナリオライターに。

 40代で「好きすぎて脚本が書けない」とまで恋焦がれた男性と結婚し、その後死別。

 夫が遺した借金を返すために「渡る世間は鬼ばかり」を執筆します。
 
 今、橋田壽賀子さんは90歳を越え、「自分の死に方」について語ります。

 病院にせよ自宅にせよ、ただベッドに横たわって死を待つなら、そうなる前に死なせてほしい。緩和ケアをしてもらって痛みはないとしても、死ぬのを待つだけの時間はイヤです。まして、意識のない状態になったら延命措置をされてしまうなど、まっぴら御免です。
 やっぱり私は、安楽死がいいです。少しでも辛い思いをしないように、一週間でも二週間でも早く死なせてほしいのです。


 さらに橋田さんは、死を選べる法律を作ってはどうかと主張。

 日本から「死」をタブー視する風潮をなくし、死の選択が法制化されるよう願います。

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■「安楽死で死なせて下さい」感想



 本書の面白さは、今まで見て見ぬふりをしてきたことにズバッと斬り込んでいる点です。

 誰でも必ず死ぬのに、日本はまるで死ぬことが珍しいことかのように、「死」から目を背けてきました。

 でもいよいよ日本は、「死」を考えることから逃れられない時代、逃れてはいけない時代になっています。

 つまり橋田壽賀子さんの主張は、現代に最も必要なものといえます。

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 なかでもうなずいたのが、医学部でもっと「死に方」について学んでほしいという主張。

 治す医療にくらべて、死ぬための医療は後ろ向きに捉えられています。最高の技術で少しでも延命させることが、病院のステータスなのです。医療が発達した時代に生きる私たちの悲劇ですね。
 病気を治して患者の命を救うことはもちろん大切ですが、患者をいかに幸せに死なせるかという医療分野だって、もっと発達していいはずです。お医者さまの専門は身体の器官別に細かく分かれていますけど、死と向き合うことを専門にするお医者さまもいるべきではないでしょうか。


 「いかに死ぬか」を考える専門医といえば、以前読んだ「がん哲学外来へようこそ」が該当します。

 「がん哲学外来へようこそ」では、「死ぬことも立派な仕事」と書かれています。

 ある男性患者の父親が、若くして癌で死ななければならない息子を不憫に思い、がん哲学外来を受診。

 そこで「息子さんには、『死ぬ』という立派な仕事が残っている」と医師は語ります。

 「がん哲学外来~」と、「安楽死で死なせて下さい」に共通しているのは、「死ぬこと」も大事な「生きること」のひとつと捉えていること。

 死に方を選ぶことは生き方を選ぶのと同じ。

 人間1人ひとりの尊厳・人生を最大限に尊重しようとするのなら、死に方の選択も視野に入れるべきなんです。

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 もちろん長生きはしたいですし、家族が尊厳死や安楽死を望んだ時に、すんなり同意できるかはわかりません。
 やっぱり、1分でも1秒でも魂がここにあってほしい、生きていてほしいと思うから・・・。

 でも世の中、死なない人はいません。
 それならば、「死」についてプロフェッショナルと共にじっくりと考え、選択できれば最高だよね。
 本人も家族も幸せだよね。

 「安楽死で死なせて下さい」を読み、そんなことを考えました。

 「死」について考えることは、心のどこかで不謹慎と思っていました。
 口に出すのもはばかれるような・・・そんな不浄のもののように感じていました。

 でもそれはどうやら大きな間違いだったよう。

 橋田さんの主張を読み、死に対する考え方がガラリと変わりました。

 「死」を選べればいいな・・・と穏やかな筆致で語る橋田壽賀子さん。

 多くの人々が夢中になったドラマを書き続けただけあり、人間の奥深くにある「本当の尊厳、真の幸せ」を見事にすくいあげてくれています。

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アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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