これはスゴ本!貫井徳郎「乱反射」。取りつかれたように一気読みしました。

評価:★★★★★

「自分だけよければいいという発想が、健太を殺したとは思わないんですね」
(本文引用)
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 気持ち悪いほど見事な小説。
 ガタガタブルブルと震えながら、一気に読みました。

 読んでいない時(ご飯を食べている時など)も、この小説がどう展開していくのか気になって仕方がなく、子供から「ママ、どうしたの?」と心配されるほど。

 今風の言い方をすれば「神小説」といったところでしょうか。

 さすが、2010年に日本推理作家協会賞を受賞しているだけあります。



 
 罪のない2歳の子どもが、大人たちが積み重ねた小さな罪で非業の死を遂げます。

 その経緯は身体中が凍り付くような、恐ろしいもの。

 もしかすると、今この瞬間にも、自分のおかした「これぐらいならいいや」と言うような罪で、誰かが死んでいるかもしれない。
 たとえばしっかり分別しなかったゴミ、駐輪禁止の場所に止めた自転車・・・。
 
 自分の心のすき間が、鋭い凶器となって、人を殺めてしまうかもしれない。

 そんな現実を、「乱反射」は痛烈に突きつけます。

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 そういえば先日、砂浜に埋められたバーベキューの炭で、子どもが足の裏に大やけどを負った事件がありましたよね。

 世の中で起きている事件・事故の裏には、本当に数々の「乱反射が」あるんです。

 「乱反射」は見事に練られたフィクションですが、ある意味、ノンフィクションとも言える小説。

 全人類必読!と言いたくなるほど、素晴らしい一冊です。 

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■「乱反射」あらすじ



 新聞記者・加山聡には2歳の子ども・健太がいます。

 しかし健太は、幼くして人生の幕を閉じることに。
 
 なぜ健太は、死ななくてはならなかったのでしょうか。

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 田丸ハナは超一流企業に勤める夫と、優秀な娘に囲まれ幸せに暮らします。
 でもハナは、心にある鬱屈を抱えていました。
 
 ああ、誰かに尊敬されたい、「すごい」って言われたい。
 そこでハナは、ある社会運動に目をつけます。

 その他、本書には様々な大人が登場。

 「空いているから」と夜間救急ばかり使う大学生、犬のフンを放置する老人、見栄で大型車をねだるわがままな妹、嫁に介護を無理やり頼む姑、潔癖症の樹医・・・。

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 普段は善良な大人たちが、「これぐらいいいか」で重ねた小さな罪。
 
 それが連鎖した瞬間、とんでもなく大きな罪に変貌。
 尊い命を奪うことになるのですが・・・?

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■「乱反射」感想



 1つひとつの小さな罪がどんどんつながり、大きな罪になっていく。
 その連鎖の描写は、一見「できすぎ」にも思えます。

 でもこれを「できすぎ」で片付けてはいけない。
 「できすぎ」で片付けた瞬間、あなたも健太君を殺した犯人となる。

 本書には、そんな強いメッセージ性があります。

 「乱反射」を読むと、過去の様々な事件・事故への見方がガラッと変わります。

 当事者でないと忘れてしまうものですが、事件の遺族や当事者の方は、何年も「あの事件・事故はなぜ起きたのか」と問い続けているのです。

 「あの横断歩道に信号をつけてくれていれば」
 「あのゴミが放置されていなければ」
 「あそこに違法駐車の車がなければ」
 
 たとえそれが直接な原因でなくても、事件・事故の真相に迫りたい。
 愛する人の死を無駄にしたくない。

 悔やんでも悔やんでも悔やみきれない思いを抱えながら、大人たちの小さな罪を追及している人が、今もいる。
 
 「乱反射」を読んでいると、そんなことに思いを馳せ、涙を流さずにいられなくなります。

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 そして、「できるだけ真っ当に生きよう。どんな小さなことでも、真面目に守ろう。それは決して小さなことではない」と背筋が伸びます。

 さらにこの「乱反射」、ラストがもう、唸るほど見事です。

 プロローグで描かれた、健太の父親の行動。
 それが最後にピリッと効き、物語全体を引き締めます。

 ただ漫然と連鎖を描いただけでなく、最初と最後に被害者の「小さな罪」をも持ってくる。
 
 連鎖の描写だけでも十分読み応えがあるのに、ラストの束ね方が実に秀逸。

 もはや「神っている」とすらいえる、120点満点、いえ1000点満点の展開です。
 こんな物語を書ける人が、世の中にいるとは・・・。

 貫井徳郎さんの小説はもともと好きですが、「乱反射」は思わず「こんなにスゴい人に会ったの初めて!」と言いたくなる一冊です。

 街を歩くと、小さな罪をあちこちに見かけます。
 
 道に捨てられたタバコの吸い殻、駐輪禁止の場所に止められた自転車、歩きスマホ等々・・・。

 それを1つでもやめれば、もしかすると1人の人間の命が救えるかもしれない。

 私が乱れた反射を止めれば、魔の光を、皆がよけられるかもしれない。

 そう思うと、「社会の一員として、しっかり生きなければ!」と思わずにはいられません。

 「乱反射」は、読み手の心のすき間を埋めることで、社会の落とし穴をも埋めてくれるのです。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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