「友情 ~平尾誠二と山中伸弥 最後の一年~」感想。誰かとつながるって、こんなに素敵なんだ・・・。

評価:★★★★★

「今の状況は、試合後半で相手にリードを許しているような感じです。でも、平尾さんはそこから何度も逆転しましたよね」
(本文引用)
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 冒頭の引用部分で挙げた「相手」とは、ラグビーチームではありません。
 「癌」です。

 ミスター・ラグビー平尾誠二さんの、あまりに早すぎる訃報は日本に大きな悲しみをもたらしました。

 日本人離れした端正な顔立ちと、ジェントルな佇まい、明晰な頭脳。

 ラグビーファンであってもなくても魅了されてしまう・・・実に不思議な偉人でした。

 そんな平尾さんが晩年、最も心を開いた友人のひとりが、ノーベル賞受賞者山中伸弥氏。



 「神戸」と「ラグビー」という共通点をもつお二人が、最後に過ごした日々とは・・・。

 医師として友として平尾氏に向き合う山中氏、患者として友として山中氏と向き合う平尾氏。

 この二人の1年は、損得なしで人とつながることの素晴らしさを、全身全霊で伝えてくれています。
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 平尾誠二氏と山中伸弥氏は、対談企画で知り合います。

 二人は最初から意気投合。

 同い年で、神戸とラグビーを愛し、子どもの年齢も同世代。

 多くの共通項を持つ二人は、すぐに家族ぐるみの付き合いを始めるまでに親交を深めます。

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 そんなある日、平尾さんが吐血したとの報告が。
 吐血の原因は、食道静脈瘤の破裂。

 実は平尾氏の体は胆管癌に侵されており、すでに肝臓は癌細胞でいっぱいに。
 肝臓に流れ込むはずの血液が行き場を失い、吐血という形で現れたのです。

 平尾さんの癌はかなり進行しており、発見された時には余命わずか。

 そこから、山中伸弥氏と平尾誠二氏、二人の壮絶な戦いが始まります。
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 本書の魅力は、山中氏が医療の専門家としてきちんと解説をしている点です。

 平尾氏の病状とはどのようなものなのか、どんな治療が今行なわれており、どんな可能性が秘められているのか。
 そして、いったいどこまで戦えるのか・・・。

 山中氏は本書のなかで、平尾誠二氏の友であることをいったん置いて、癌治療について真摯に語っていきます。

 たとえば民間療法との付き合い方や、治験の手順などについても詳しく言及。

 癌と闘う患者と、その家族がどれほど悩み苦しみ迷うか。
 そして治す側は、患者と家族をどのようにフォローしていくべきか。

 山中氏は時に冷静に、時に激しく、一人の医師として癌治療の難しさについて語っていきます。

 それだけに、残り少ない平尾氏との日々は涙なくして読めません。

 平尾さんに一日でも長く生きてほしい。
 そのためなら、医師として何でもしてあげたい。

 でもプロだけに、限界が見えている。
 ならば、少しでも幸せに最期を迎えてほしい。
 平尾誠二らしく人生を全うしてほしい。
 そのうえでできれば、一分でも一秒でも長く生きてほしい。

 そんな山中氏の心の叫びが、行間からにじみ出ています。

 そしてそんな山中氏の姿勢に応えるかのように、最期まで闘いを諦めず、かといって取り乱すことなく人生を全うしようとする平尾氏。

 この二人の呼応関係を読み、私は初めてこう感じました。

 「人と人とのつながりとは、こんなに素晴らしいものなのか」

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 読む前は、日本を代表する著名人同士の友情だから、さぞかし華やかなものなのだろうと想像していました。

 しかしそこにあったのは、有名人の友情ではありませんでした。

 ただ、互いに心から信頼しあう二人の男性だったのです。

 人生、華やかでなくてもいい。富や名声がなくてもいい。

 たった一人でも、心から敬愛できる友がいれば、何と人生は素晴らしくなることか。

 本書を読み、そんなことを強く強く感じました。

 最後に、本書のなかで最も印象に残った言葉を記しておきます。

 これは、平尾誠二氏の奥様が、山中先生に「お忙しいのに申し訳ありません」「お手数をおかけしてすみません」と伝えるたびに、山中先生が返した言葉です。

「本当にそれは言わないでください。一緒に闘えて幸せです」



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アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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