「赤い背中」の少年・谷口稜曄さんを偲んで・・・「生きているかぎり語りつづける」舘林愛

評価:★★★★★

私は皆さんに私の体をしっかりと目に焼きつけてほしいと思うのです。核と人間は決して共存できません。
(本文引用)
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 朝日小学生新聞(2017/09/16)で知り、すぐに購入しました。
 とにかく読まなきゃいけない、手元に置いておかなければいけない、そう痛烈に感じたのです。

 本書は谷口稜曄さんの人生を追ったノンフィクション。
 多くの方が、谷口さんの写真は見たことがあるのではないでしょうか。

 1945年8月9日、長崎。
 16歳だった谷口さんは郵便配達の最中、爆心地から1.8kmの地点で被爆しました。

 谷口さんは背中に大やけどを負い、病院に搬送。
 その時に撮影された「赤い背中」は、原爆の酷さを訴えつづけています。



 谷口さんは2017年8月30日、88歳で亡くなりました。
 素晴らしい伴侶とお子さん、そしてお孫さん、ひ孫にも恵まれ喜びもたくさんあったかと思います。

 やはり命が助かって良かった・・・心からそう思えます。

 でも本書を読むと、単純に「生きていて良かった」と言うことにためらいを覚えます。

 原爆を受けながら生き続けることがどれだけ大変だったか、体と心に核の傷跡を大きく残しながら生きることに、どれほどの覚悟と勇気が必要だったか。

 察するに余りあるものを感じ、涙が止まりません。

 年月とともに、核のむごたらしさ、戦争の悲惨さを語れる人は減っています。
 せめて私にできることは、本書のような文献を読み、ささやかながら伝えていくことかな? と思い、ここにご紹介します。
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 本書に書かれている谷口さんのメッセージは、「私の体から目をそらさないで」。

 そのメッセージは、谷口さんの奥様からのメッセージでもあります。

 本書には谷口少年が被爆した当時のことも書かれていますが、主に夫婦二人三脚の様子が書かれています。

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 結婚当初、旅館のお風呂で「背中を流してほしい」と言われ、谷口さんの背中を見た時の衝撃、
 夫の体と言葉で初めて知った、原爆の非情さ、
 わきあがる、戦争に対する怒りと悲しみ

 谷口さんの妻・栄子さんは、谷口さんの深く傷ついた心も体も全て心から愛し、毎日軟膏を塗りつづけました。

 本書を読み痛感したのは、戦争の傷跡というのは本当に、決して、絶対に消えないということです。

 谷口さんは70年以上、体重が3kg以上増えないように徹底してきました。
 それ以上体重が増えると、背中の皮膚が引っ張られて割けてしまうからです。

 仰向けになって熟睡することもできません。
 背中には正体不明の腫瘍のようなものができ続け、20回以上手術を受けてきました。
 背中に汗腺がないため、体温調節もできません。

 谷口さんの体に残る戦争の爪痕は、ずっと消えることがありませんでした。

 そんな谷口さんを献身的に支え続けた妻・栄子さん、そして勇気と使命感をもって語りつづけた谷口さんご自身。

 谷口さんご夫婦の姿を少しでも知ったら、戦争や核に向けて歩を進めることなど、決してできないのではないでしょうか。

 今、世界でまた「核」が動き出しています。

 谷口さんの体を見つめ、谷口さんの遺志を受け継ぎ、次世代に伝えていく時が、今まさに来ているのです。

 谷口さんのご冥福を心から祈るとともに、本書を通して「自分にできること」を少しずつでも考えていけたら・・・と心から思います。
  
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アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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