サラッと読める夏の怪談!?宮部みゆき「地下街の雨」

評価:★★★★☆

  「なんちゅうのかねえ・・・・・・あんな稼業をしていると、他人様の人生をのぞくような気分を味わうことがよくあるんだけども、あの時は、ただのぞいただけじゃなしに、他人様の人生を盗んだような気がしたんですよ」
(本文引用)
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 集英社文庫「ナツイチ」の一冊。
 宮部みゆきさんによる、サラッと読めるミステリー・・・というか怪談ですね。

 人間、心に何か後ろめたいところがあると、何でも「恐怖」になってしまうものなんですね。

 「幽霊の正体見たり枯れ尾花」というのは、枯れ尾花に原因があるのではなく、枯れ尾花を見た人の心に原因があるようです。

 心に濁りが一点もない人はいないと思いますが、その一点がとんでもない事態を引き起こすことも・・・。

 「地下街の雨」を読むと、心の整理整頓が必要なことがよーくわかります。
 そうしないと、車ごと海に突っ込んだり、人の葬儀でもめたり、突然世の中から音が消えたりするかもしれませんよ。



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「地下街の雨」あらすじ



 本書は7篇から成る短編集です。

 表題作「地下街の雨」は、喫茶店のウェイトレスの話。
 大手企業に勤めていた麻子は、婚約が破談になり退職。
 会社近くの喫茶店で、ウェイトレスとして働きはじめます。

 ある日、そこにひとりの女性がやってきます。
 女性は麻子に親しげに話しかけますが、どうやら、かなり問題のある人間の様子。
 調べてみると、彼女は思い込みや妄想が激しい性格で、前職を辞めさせられたとか。

 麻子は彼女と距離を置きたいと思いますが、なぜかずいずいと麻子に近づいてきます。
 しかしそこには、意外な理由があったのです。
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「地下街の雨」感想



 「あらすじ」では、表題作「地下街の雨」について書きましたが、実は私がいちばん好きなのは第5話「勝ち逃げ」です。

 主人公の浩美は、ある日、叔母の訃報を聞きます。
 叔母は非常に頭の切れる女性で、教育者として長く社会に尽くしてきましたが、恋愛とは無縁の人生のようでした。

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 ところがある日、叔母のもとに一通の手紙が届きます。
 浩美はその手紙を読み、叔母が若い頃、駆け落ちをしようとしたことを知ります。

 さて、いったい誰がそんな手紙を入れたのでしょうか。

 この「勝ち逃げ」は、ラスト1ページで「え?ええ?」と読み返したくなる事実が判明します。

 しかしそこに至るまでの、親戚たちの心の交錯がなかなか見もの。

 誰がこの手紙を入れたのか、手紙によって叔母への気持ちはどう変わるのか、そして駆け落ちの相手は誰なのか。

 さんざん読者を翻弄し、疲れた頃にソロリと種を明かし、アッと驚かせる仕掛けは、さすがミステリーの名手!
 「勝ち逃げ」を読む時には、一語一句よく頭に叩き込みながら読んでみてください。

 本書に収められる物語はすべて、心の迷いが大きな騒動を引き起こすものばかり。
 心に引っかかるものがあると、ほんの小さなことがトリガーとなり、人命を落とすことにもなるようです。

 宮部作品としては、長編ミステリーに比べると、やや物足りなさを感じるかもしれません。
 でもちょっとした心のボタンのかけちがいや、不満、嫉妬、羨望、自己否定感が自分の人生も他人の人生も狂わせてしまうという点では、非常に宮部みゆきらしい短編集といえます。

 サラッと読めるけどグサッとくる、夏の怪談「地下街の雨」。
 読むと涼しくなるので、猛暑の日にどうぞ。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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