追悼・日野原重明さん「明日をつくる十歳のきみへ ~一〇三歳のわたしから~」

評価:★★★★★

 そのインスピレーションは、わたしにこう伝えていました。「これまでの人生は、自分のために生きてきた。これからは、世話になった人への恩返しでなく、出会ったどんな人にも自分のいのちを捧げよう」と。
(本文引用)
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 先月、聖路加国際病院名誉院長・日野原重明先生が亡くなりました。
 105歳という大往生でしたが、本書を読んだら「まだ生きていてほしかった」という悔しい気持ちが沸き上がりました。

 なぜなら日野原先生は、本書でこんな句を寄せているから。 

「オリンピック 一〇八歳のバー 軽々と」

 日野原先生は、十歳の子どもたちといっしょに東京オリンピックを楽しみたかったそうです。

 そう考えると「もう3年、生きていてくだされば」と思ってしまいますが、きっと空の上から東京オリンピックを見守って下さることでしょう。



 逝去されるまで、人々の心に灯をともしつづけた日野原重明さん。
 本書は、日野原先生の崇高な魂の源泉を知ることができる貴重な一冊です。
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 本書には、日野原先生の信念・メッセージが3つ込められています。

 1つは「人生に無駄なものはひとつもない」
 2つめは「他人のために自分の時間・命を使う」
 3つめは「いつまでも夢を持つ」

 ことです。

 まず「人生に無駄なものはひとつもない」について。
 
 日野原先生は若い頃、いくつか重病を患っています。
 当時はまだ特効薬もなく、ひたすら安静にするしかないなかで、日野原青年は焦りを感じます。

 でも後々、日野原先生は「あの病気があったからこそ、今の自分がある」と思うようになります。

 腎炎で運動ができなくなったためにピアノと出会い、結核で辛い日々を送ったおかげで、患者の気持ちに寄り添う医師となった――そんな経験を通して、日野原先生は「人生にむだなものはひとつもない」と語ります。

 そして2つめ、「他人のために自分の時間・命を使う」について。
 日野原先生がそう思うようになったきっかけは、かなり驚きのものでした(私が知らなかっただけかしら?)。

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 1970年、日野原先生は九州の学会に出席するため、飛行機に乗ります。
 すると離陸直後、9人の若者が日本刀やピストル、ダイナマイトなどを持って立ち上がり、飛行機を北朝鮮に向かわせようとします。
 そう、日野原先生は「よど号ハイジャック事件」に巻き込まれてしまったのです。

 日野原先生は生きた心地がしなかったそうですが、そこで当時の運輸政務次官が身代わりとなり平壌に行くことに。
 日野原先生は、無事飛行機を降りることができたそうです。

 「よど号」ハイジャック事件に巻き込まれたことで、日野原先生は「初めて会った人にも自分の命を捧げよう」と決意。

 その思いは、後に地下鉄サリン事件でも生かされることになります。
 聖路加国際病院はサリン事件に巻き込まれた人を多数引き受け、適切な対処で多くの人命を救うことになります。

 そして3つめ、「いつまでも夢を持つ」こと。

 100歳を越えてもなお夢を持ち続けた日野原先生ですが、ここで日野原先生の意外な面が現れます。
 ずっと自分の足で歩き続けていた日野原先生ですが、年齢も年齢なので、さすがに晩年は車椅子を勧められます。

 日野原先生は当初はそれを拒み、乗り始めてからも恥ずかしさに顔を隠していたそう。でも考えを改め、堂々と車椅子を乗るようにしたところ、車椅子だからこそわかる景色に気がついたとのことです。

 日野原先生が車椅子を拒み、恥ずかしいと感じていた・・・これは結構意外でしたね。
 何となく、人の勧めるものは何でも「ああ、それはいいですね」とすんなり受け入れるような印象があったので・・・。

 本書は、そんな日野原重明先生の横顔まで知ることができます。

 日野原重明先生の生き方が最良というわけでもありませんし、こう心がけたから105歳まで生きられたというものでもありません。

 でも、日野原先生の生き方からは「かっこいい大人」という言葉が浮かんできます。
 「いつまでも元気なお年寄り」というのではなく「かっこいい大人」。

 すべての時間を自分のことに使う子ども時代を終えたら、今度は他人に自分の人生を注ぎ込む大人時代に突入する。

 本書からは、そのかっこよさ、美しさをビシビシと感じ取ることができます。
 そしてそんな利他的な生き方が、結局は自分の喜びになるということも・・・。

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 なかなか真似することはできませんが、本書を読むだけでも、「幸せな人生」のエッセンスを頭にちょっぴりふりかけることができたかなーと思います。

 タイトルに「十歳のきみへ」とありますが、大人の方が読んでも学ぶところ大!な一冊ですよ。

 小学生のお子さんがいらっしゃる方は、ぜひ親子で読んでみてください。 

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
仕事・家事・育児の合間に文字を楽しむ、兼業主婦の備忘録です。
本の評価は以下のとおり(2015年10月~)
★★★★★=読むと一生幸せでいられます。
★★★★☆=読むと1年間幸せでいられます。
★★★☆☆=読むと1週間幸せでいられます。
★★☆☆☆=これ以下の本は載せません。

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