荻原浩「二千七百の夏と冬」で泣きすぎて窒息しそうになりました。

評価:★★★★★

 何の努力もせずに手に入れられる国籍を誇ったって、自分自身は一センチも前に進めない。
(本文引用)
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  「二千七百の夏と冬」のレビューを見ると、いちばん多い言葉がこれ。

 「涙が止まらなくなった」

 です。

 そして下巻の最後の5行を読み、本当に涙がボロボロボロボロ。
 体の奥からあふれるように涙が出て、声も出せず、窒息しそうになりました。

 読み終えた今でも、最後のシーンが頭に浮かぶと、脳内でどこかのダムが決壊するおうに涙がドバーッと出てきます。
 ここ数年で、いちばん泣いた小説です。

 荻原浩作品といえば、直木賞受賞作「海の見える理髪店」でもおおいに泣かせていただきました。
 
 でも涙の瞬間最大量は「二千七百の夏と冬」の方が多いかも。
 これね、日本人じゃなくて西洋人で映画化するのなら、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットでやってほしいです。(あれ?ちょっとネタバレしたかな?)
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 主人公の佐藤香椰は新聞記者。このたび、縄文人の男性と弥生人の女性の人骨が発見され、取材をすることになります。





 人骨の男女の年齢は、まだ少年少女といったところ。
 でもよく見ると、どうやら互いに手を取り合っている様子です。

 三千年近く前に、いったい日本で何があったのか。
 人骨の主は、どんな人生を送っていたのか。

 香椰はかつての恋人に思いを馳せながら、縄文と弥生のロマンスについて取材を重ねますが・・・?
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 「二千七百の夏と冬」は、現代と過去とが交互に現れる構成になっています。

 香椰が研究者・松野とともに人骨の謎に迫り、その謎を裏付けるように、紀元前七世紀にさかのぼっていく。
 その進め方は、どことなくEテレの歴史番組や、「まんがはじめてものがたり」を思い出させます。

 印象的なのは、香椰が人骨と恋人を通じて「日本人」について思いをめぐらせる点です。

 香椰がかつて愛した人は在日韓国人。
 香椰は最初、それを知らず「私たち日本人」という認識で恋人と話します。

 しかし恋人の秘密を1つひとつ知るうちに、日本人とは誰のことなのか、日本人とは何なのか、そして国籍とは何なのかについて疑問を持ちはじめます。

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 「二千七百の夏と冬」の素晴らしい点は、壮大な歴史ロマンですが、それにとどまらず「現代の課題」を鋭く描いているところです。

 世界に渦巻く排外主義、テロ、ヘイトスピーチ・・・。

 いったい何の権利があって、己と違う国籍の者や信条を持つ者を排除しようとするのか。
 「二千七百の夏と冬」には、排外主義に対する怒りや悲しみが思いっきりぶつけられているのです。

 そしてラスト、二人の人骨はどうしてこのような形になったのか。
 真相を知れば必ず、涙が滂沱のごとくあふれてきますよ。

 人間はどうやってつながり、滅ぶことなく現代まで続いてきたのか。
 そして国籍とは何なのか。
 愛とは、何なのか。

 数千年分の歴史と愛がたっぷりと詰め込まれた「二千七百の夏と冬」。

 ぜひ、声を出してボロボロになるまで泣ける場所で読んでみてくださいね。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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