女が働くのは欲張り?子どもがかわいそう?NPOで働く女性たちから「女の働き方」を見る。「N女の研究」中村安希

評価:★★★★★

 やるべきことはシンプルだ。手を貸せばいい。分裂を食い止め、ゆるやかな連帯を維持していくために、利害の一致しない隣の女性のために一緒に戦うしかないのである。
(本文引用)
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 タイトルの「N女」とは「NPOで働く女子(女性)」という意味です。

 タイトルだけ聞くと「純粋な心で、自分の身を削ってでも国際問題や日本の社会問題に斬り込んでいく女性を描いた本」のように見えますよね。

 でも実際は、かなり違います。

 著者の中村安希さんも 

「彼女たちを取材していると、かつて主流だった自己犠牲型のスタッフたちとは明らかに違う空気を感じる」

 と書いていますが、まさにその通り。



 本書に登場する「N女」たちは、自己を決して犠牲にはしていません。
 むしろ「自分の人生は自分が主役」という気持ちが強いからこそ、NPOを選んでいます。
 いずれ劣らぬ高学歴と華やかな前職。
 普通、少々何があろうと手放さないであろう諸々のことを手放して、NPOに飛び込んでいった「N女」たち。

 彼女たちは今、働きながら何を思っているのか。
 そして世の女性たちは今、何を思い仕事に出ているのか。

 「N女」たちの姿からは、日本の労働市場や女性の働き方に潜む問題点が見えてきます。
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 「N女の研究」に登場する女性たちは、みなNPOの職員です。代表者ではありません。

 著者・中村安希さんが、しっかりとしたNPOを厳選していることもあるのでしょう。
 夫婦ともにNPOに勤めていても、生活に支障がない人もいます。

 でもなかには能力のわりには待遇が・・・という人がいるのも事実。
 また、現在の待遇に満足しており、将来は独立まで考えている人でも、育児と仕事の両立まで考えると不安を隠せずにいる人もいます。

 そう聞くと、「やはりNPOに勤める女性は自己犠牲的な人なのでは?」と思いがちですが、それは違います。

 N女たちは自分の人生を大切に思っているからこそ、NPOを選んでいます。

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 生身の人間を感じたい、自分が生きていることを感じたい、自分で仕事を創りあげて、社会も創っていきたい。

 N女たちは良い意味で、非常に貪欲。
 生きる意欲に満ちています。

 たとえばNPO法人「NPOサポートセンター」に勤める女性は、N女たちについてこう語ります。 

「余計なことに力を使わず自由にやりたい人にとっては、魅力があるのではないかと。一般企業で頑張ってキャリア形成するのも一つの道ですが、ガラスの天井は依然厚く、職能分離も存在します。NPOの女性たちは、その点においては解放されている気がします。自由に社会をクリエイトしたい人、自分でどんどんデザインしていける人にとっては、刺激的な職場なのではないでしょうか」

 この本に登場する「N女」たちが、大手の民間企業からNPOに転職する理由は、ずばりそこにあるようです。

 「N女の研究」を読んでいると力がわいてくるのは、N女たちの生命力や行動力がページからあふれているからなんですね。

 でもだからこそ、終盤で厳然と語られる「働く女性に立ちはだかる壁」にガックリと来ます。

 N女たちも、著者の中村安希さんも「仕事も子育ても両方するのは欲張り」と男性に言われた経験があるのだとか。 

「子どもがかわいそうって思わんの? 親の勝手で仕事続けたいとかってさ、それは欲張りなんじゃない?」
「じゃあさ、あなたは? 子ども放ったらかして仕事してるやん」
「はぁ? だって俺は男やろ」

 

「男ってのはさ、ああいう女が苦手なんだよ。子どもも出世も、どっちも手に入れようなんてさ、欲張りな女だとおもうわけ。旦那がかわいそう。同情してる男は多いと思うよ」


 この2つはいずれも男性の言葉ですが、女性同士でも「働く母親」に対する風当たりが強い時があります。

 「母になっても働くこと」は、日本ではまだまだ受け入れられていない、頭ではわかっていても心ではついていけていないのだなぁ・・・と、「N女の研究」を読み、改めて痛烈に感じました。

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 社会をクリエイトしていくN女たち、女性が働くことの障害を日々感じながらも、組織の柔軟性を活かして羽ばたいていくN女たち。

 彼女たちは確かに欲張りなのかもしれません。

 でも、欲張りな人がいなかったら、誰が社会を変えるのでしょうか?
 N女たちのような欲張りな女性たちが、今、いちばん必要なのかもしれません。 

「NPOって、新しい価値を作っていく仕事、世の中の価値観を変えていかなくてはいけない仕事なんです。病児保育にしても、自分がかつてそうだったように、怖くて使えないと思っている人もいるので、ではその不安をどうやって取り除いて安心に切り替えていくか。人々のマインドセットを変えていくのがNPOであり、広報の仕事です」

 NPO法人で広報部マネージャーを務める女性の声が、いつまでも胸に響きます。

 NPOに限らず、「女性が働くとはどういうことか」「母親が働くとはどういうことか」をじっくりと考えさせてくれる良書です。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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