理学部出身作家による新感覚ホラーコメディ「5まで数える」(松崎有理)。星新一さんが好きな人には良いかも!

評価:★★★★★

 「死ぬべきじゃないひとが死なない方法がないか、って考えるようになった」
(本文引用)
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 日経新聞「目利きが選ぶ今週の3冊」で紹介されていたので、読んでみました。
 「5まで数える」の著者・松崎有理さんは東北大学理学部卒。
 理系出身の小説家が、専門知識を生かした小説を書くのは珍しくありません。

 が、「5まで数える」は理系色が特に濃厚な一冊。

 実験医が命を落とすことなく、感染症を撃退できないか。
 互い手錠でつながった凶悪犯罪者たちが、いかにして生き残ろうとするか等々・・・。

 「5まで数える」を読んでいると、昔、星新一さんのショートショートに夢中だったことを思い出します。



 自然な存在である人間と、人間が作り出す科学とは、どこまで相容れることができるのか。
 実生活に生かされている科学と、実際にはありえないファンタジーとは、どこまで融合できるのか。

 「5まで数える」は、「人間×科学×ファンタジーが溶け合うとこんなに面白い物語ができるんだ~!」と感動できる短編集です。
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 第一話の「たとえわれ命死ぬとも」は、感染症に対抗する実験医の物語です。

 主人公の大良は、彗星病撲滅を目指す実験医。
 彗星病は彗星と同じスパンで流行する感染症で、大良の妹を死に至らしめた病です。

 実験医たちはこぞって彗星病撲滅に乗り出しますが、その過程で医師たちは命を落とします。
 そこで大良は「人間が死ぬことなく、彗星病をやっつけるワクチンを作りたい」と尽力。

 有精卵などを使い、何年にもわたり実験を続けますが・・・?

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 この「たとえわれ命死ぬとも」はホラーですが、良い意味で「笑えないホラー」といえます。

 良い意味でと言ったのは、実際の医療問題を含んでいるから。
 
 昔も今も「人間が死ぬことなく、病を撲滅させたい」と考える医師はたくさんいます。
 研究者たちの汗と涙のおかげで、今、多くの人の命が救われているわけですね。

 でもなかにはゼンメルヴァイスのように、正しいことをしているのに、冷たい視線を浴びる研究者も。

 「たとえわれ命死ぬとも」は、世を皮肉ったホラーですが、誠実さと真摯さと温かさを強く感じる一遍。
 世間に葬り去られた研究者たちに報いようとす情熱が、ほとばしっている物語です。

 ちなみに「たとえわれ命死ぬとも」を読む場合は、「自分の体で実験したい」も読んでおくのがオススメ。

 私はたまたま読んでいたため、「ああそうそう、この人この人!」と何倍も面白く読むことができました。
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 さて、「5まで数える」のなかで私がいちばん好きなのは、最終話「超耐水性日焼け止め開発の顛末」。
日焼け止めの話ということで、夏にピッタリの一遍です。



 主人公のヨーコは、化粧品メーカーの研究員。
 汗で落ちない日焼け止めを開発します。

 ヨーコが開発した日焼け止めは、評判も上々。
 水に落ちにくく、肌にもなじみやすいのがウケて売れ行きも好調です。

 ある日、ヨーコは長身で色白の男性に呼び止められ、こう言われます。 

「この商品について、お礼をいいたくて。おかげでこんな昼間でも外出できるようになりましたから」

 ヨーコは喜びますが、ふとした瞬間に、男性の奇妙さに気がつきます。

 そして常備していた「あるもの」を彼に吹きつけるのですが・・・?

 この「超耐水性日焼け止め開発の顛末」は、ぜひ「世にも奇妙な物語」でドラマ化してほしいです。
 視聴者は皆、ラストの映像を観た瞬間に「そういうわけだったのかぁ~!」と度肝を抜かれることでしょう。

 ヨーコ役は中谷美紀さん、男性役はオダギリジョーさんあたりでやってほしいです!

 理系の匂いプンプンのホラー短編集「5まで数える」で、今年の夏は涼しく過ごしましょう。

※「5まで数える」の中にあるクイズをアレンジしてみました。
この問題、正解なら1秒もかからず解けるのですが、わかりますか?
ぜひ挑戦してみてください(^^)

「わたしが渋谷駅に行く途中、向こうから男性が歩いてきました。
彼は妻と息子と娘を連れ
彼の妻は友人3人を連れています。
彼の妻の友人はそれぞれ2人の子どもを連れ
彼の息子は友だち4人を連れ
彼の娘は友だち2人を連れています。
男性、男性の妻、男性の妻の友人、男性の妻の友人の子ども、男性の息子、男性の息子の友だち、男性の娘、男性の娘の友だち
さて、何人が渋谷駅に向かっていたでしょうか」

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ちょっと簡単すぎるかな~?


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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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