小学生ママは感涙必至!加納朋子「七人の敵がいる」

評価:★★★★★

「――そもそもPTA役員なんて、専業主婦の方じゃなければ無理じゃありませんか」
思えばそれが、その場にいた保護者の多くを敵に回した瞬間だった。

(本文引用)
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 もはや「小学生ママ必読」ともいえる子育て小説のロングセラー。
 この滋味深さとスカッと感は、学校版「半沢直樹」(古いですか?)と手放しで称賛したくなります。

 今春、お子さんが小学校に上がられた方、さらに言うとPTAの委員・役員になってしまった方はぜひとも手に取ってみてください。

 「PTAなんて、めんどくさいな~」

 そんなことを考えながらページをめくっているうちに、どんどん認識が変わっていきますよ。

 「よーっし、いっちょ、やってやるか!」

 とね。



 私は娘が小1・小2の時の2年間、PTAの委員を務めましたが、生来お気楽な性格のせいか、非常に楽しく活動することができました。
 でもその前にこの小説を読んでいたら、もっと前向きかつスムーズに活動できたのではないかと悔やんでいます。

 いえ、PTAだけではありません。

 昨年務めた町内会の班長、子どもの習い事の送り迎え、夫との向き合い方、仕事と育児のバランスの取り方・・・「女」として「妻」として「母」として、もっと早くこの小説を読んでおくべきだったなぁと後悔しきりです。

 でもまだ遅くはない!

 この本を片手に、女・妻・母、そして社会の一員として充実した生活を送っていければいいな。そう心から思っています。

 そして同じように奮闘している誰かに、主人公・山田陽子の言葉をかけられたらいいな。 

「あなたは、すごく頑張っているのね」


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 山田陽子は出版社の編集者。陽子には、今年小学校に上がった息子・陽介がいます。

 バリバリのキャリアウーマンである陽子は、社内で「ブルさん」と呼ばれる性格。ブルとはブルドーザーのことで、とにかく誰に対しても臆することなく自分の意見をどんどん主張していきます。

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 そんな性格が災いし、新学期最初の保護者会では浮きまくり。

 PTAの役員決めで「私には無理」の一点張りを通し、早くも「女の敵」を作ってしまいます。

 ところが気がつけば陽子は、PTAにも町内会にもスポ少にもどっぷりと浸かってしまうことに。
 でも、どこにいてもブルドーザーのような姿勢は変わることなく、敵は増えていくばかりです。

 ママ友、義母・義家族、男性社員、夫、子ども、先生、PTA会長・・・陽子は、彼ら7人の敵とどのように渡り合っていくのか。
 右頬を叩かれれば、同じく右頬を叩き返すという陽子の行く末はいかに?

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 実は私は一度、この本を読むのを挫折してしまったんです。

 それというのも、陽子のキャラクターが強烈すぎてついていけなかったから。
 最初の保護者会の場面を読み、陽子のエベレストより高いプライドと恐ろしいまでの自信に嫌悪を感じてしまい、読み進めることができませんでした。

 でも春になり、改めてPTA問題が取り沙汰されるようになったので再度トライ。

 そしたら、あまりにも面白くて一気読み!
 気がつけば、陽子のことが大好きになっていました。

 たとえば学童保育の親子遠足の場面。

 陽子はその遠足の打ち合わせでも、「AKY(あえて空気読まない)」キャラを炸裂。

 会長の、ただひたすら感情に訴える要領を得ない話にいら立ち、「一生忘れられない思い出って、いったい何をするおつもりですか?」「具体案はあるんですか?」「今はゴミを捨てるのも有料ですが、役員で分担して負担するわけですか」などと追い詰めていきます。

 その追い詰めぶりは、嫌悪を通り越して呆れるほど。 

「立っているものすべてをなぎ倒す勢いよね。あとにはもうぺんぺん草一本残らない感じ」

 と、陽子の友人がたとえるほどです。

 本書を手に取った方のなかには、そんな陽子のキャラクターに辟易し、読むのをやめてしまう方もおられるかもしれません。

 でも、もう少し、もう少しだけ辛抱して読んでみてください。
 陽子に惚れ込んでしまう瞬間が、必ず訪れます。

 たとえば、同じく親子遠足の一幕。

 ソフトクリームを団体で買ったところ、最後に並んでいた家族の分だけお金が足りなくなってしまいます。

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 事前に集めていた参加費で、家族分のソフトクリームを買えるはずなのに・・・。

 陽子は不思議に思いますが、すぐに原因が判明。
 参加費を払わず、後から合流してきた家族がソフトクリームをもらっていたのです。

 陽子はその家族に近づき、その場ではっきりとソフトクリーム代を請求。
 団体割引料金ではなく、定価の代金をきっちりと示し、払うよう命じます。

 しかしルーズな彼らは、とんでもない発言を連発。 

「山田さんだっけー、そのくらい、奢ってよー。お金持ちなんでしょ?」

 

「ケチケチすんなよな、たかがソフトでよー」



 でもそこからが陽子の本領発揮。 

「たかがソフト代をケチっているのはそちらでしょ」

 

「お子さんの前ならなおさら、ルールは守ってください。七百五十円、今、いただきます」


 陽子は、ヤンキー夫の脅しにも全くひるむことなく、有無を言わせぬ勢いでソフトクリーム代をもらい、見事にトラブルを処理していくのです。

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 最初はトラブルメーカーになりそうだった陽子でしたが、次第にその「濃すぎるキャラ」がトラブルを次々と解決。
 怪しい教師や、「やっぱり母親は家にいないと云々」と嫌味を言い続けるPTA会長を、完膚なきまでにやっつけます。

 そして読むうちに、私はなぜ最初、陽子が嫌いだったのかがわかってきました。

 それは「私にはできないことを、息を吸うように軽々とやれてしまうから」
 わいせつ教師、泥棒ママ、電話をとらない部下、何かとマウンティングしようとする女たち・・・。
 陽子はそんな人間たちに平気で立ち向かい、周囲に光をもたらしていくのです。

 そしてその行動の中から、時折垣間見える陽子の温かさ。

 それに触れるたびに、思わず涙がホロリとこぼれます。

 女性同士の付き合いや、学校・先生・地域との関わり等、神経をすり減らしている「小学生ママ」は多いことでしょう。

 もし今、「小学生ママ」である自分に疲れていたら、ぜひこの本を手に取ってみてください。

 背中に羽が生えたように、身も心もグンと軽くなりますよ。

 最後に、作中に登場するこの言葉をご紹介しておきます。 

「あの続き、ご存じ? ・・・・・・七人の敵がいる、されど・・・・・・」ややためらってから、上条は続ける。「・・・・・八人の仲間有り」



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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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