浅野忠信主演で映画化!重松清「幼な子われらに生まれ」内容と感想

評価:★★★★★

 ウォルト・ディズニーなら、きっと、すべての登場人物が幸せになるよう取り計らってくれるはずだ。そのための魔法を使うには、私はどんな呪文を唱えればいいのだろうか。
(本文引用)
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 2017年8月に映画公開される「幼な子われらに生まれ」
 主演は浅野忠信さんと田中麗奈さんですが、寺島しのぶさんが出演されるというのが気になりますね。
 
 寺島しのぶさんが出るというだけで、ただものではない映画になる気がします。
 寺島しのぶさんが出演されるなら観に行こうかな。

 ちなみに宮藤官九郎さんも出演されるそうです。もしかして、あの「ひどい亭主」の役なのかな?

 とにもかくにも、8月26日の公開が楽しみです。



 さて、この「幼な子われらに生まれ」ですが、小説家重松清、渾身の一作だと思います。
 重松清さんといえば「家族もの小説」の名手ですが、本作は特に力が入っているのでは?

 その証拠に、文庫版あとがきにはこんな言葉が。 

たとえ地味だと言われてもかまわない。一つのいのちが生まれるまでの日々を、一人の男が「父親」になるまでの過程を、ただひたすら丹念に、自分なりにせいいっぱい誠実に書き綴りたかった。

 「一人の男が父親になるまでの過程」を、稀代の名小説家・重松清はどう書き綴ったのか。
 新しい家族を作るうえで直面する問題を、男・重松清はどうとらえたのか。

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 本書は、「家族としての自分」と「一人の人間としての自分」を考えさせてくれます。
 それはもう、目まいがするほどに。

 しかしそこに、本書を読む価値があります。
 ページを閉じた後、あなたはきっと、家族として、そして一個の人間としての生き方を見つめなおすことができるでしょう。

 「自分はどう生きていくべきか」「自分はどう生きていきたいか」

 「幼な子われらに生まれ」は子どもの有無に関係なく、自分の生きる道筋を照らしてくれ物語です。
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 主人公は37歳の男性。家族は妻と、2人の娘たちです。

 実は彼と妻は再婚同士の夫婦。彼は前妻との間に娘がおり、月に一度娘と会っています。

 一方の妻は、前の夫とは音信不通。暴力をふるい、子どもの首をしめようとするような夫だったため、顔も見たくない状態です。

 ある日、主人公と妻の間に新しい命が芽生えたことが判明。

 複雑な家族構成なため、正直に言って複雑な心境ですが、二人は新しい家族を喜んで迎えようとします。

 ところがその頃から、長女・薫の心理状態が悪化。現在の父親である主人公に激しい抵抗をしめし、「実のパパに会いたい」と言って聞きません。

 前夫を心から嫌悪している妻は、薫の要望を拒みますが、主人公の男性はそれを汲んでやりたいと願います。

 しかしそれは同時に「自分は父親として認められていない」という現実を思い知ることにもなります。

 男性はおおいに悩み、妻に決して言ってはいけない言葉を吐いてしまい・・・?
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 この小説に登場する家族は、ややレアなケースかもしれません。
 でも、いわゆる「普通の家族」を形成している人にとっても、非常に学ぶところが大きい内容です。

 たとえば母親なら、一度や二度は「私は母親として失格なのではないか」と悩んだことがあるのではないでしょうか。

 自分の体内から産んだから、仕方なく親をやっているだけなのではないか。
 本当は、自分なんかよりもっとこの子にふさわしい、この子を幸せにしてくれる女性がいるのではないか。

 そんなことを思ってしまうこともあるのではないでしょうか。
 (そういえば「下剋上受験」のお父様は、娘さんがあまりにも可愛いので「暖炉のあるような裕福な家に生まれさせてやりたかった」と書いていました。)

 それでも親であるかぎりは、何とかして育てていかなければなりません。
 子育てとは、家族を作るとは、出口の見えない耐久レースなんですよね。
 この「幼な子われらに生まれ」を読み、改めてそのレースの過酷さを認識させられました。

 血がつながっていてもいなくても、家族を作ることはとても大変。
 そして血がつながっていてもいなくても、家族を壊すことはもっと大変。

 一冊丸ごとを通じて描かれる、主人公の男性のジレンマは、世の中に「家族というものの強固さと脆さ」を気づかせてくれます。

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 それにしても重松清さんは、やっぱりうまい!ですね。

 主人公の男性がストレスのはけ口として選んだ場所は、かなり突拍子もないもの。
 しかも一度ならず二度も三度も通っており、正直「ドン引き」。

 でも、ここまで日常と離れたところでないと、却って気持ちの整理というものはできないのかもしれません。

 主人公の男性が通った場所でストレスを発散するのは、現実にはあまりおすすめしたくありませんが、解決のヒントにはなるかも。
 何かにどうにも行き詰まったら、たとえ現実逃避と言われてもガラッと環境を変えてみるのは大切なのでしょう。

 そのような「舞台」を設定するあたりが、重松清さんの妙技。
 人間心理の倒錯ぶりを、そのような舞台を用いて表すあたりは「さすが」としか言いようがありません。

 家族としての自分、一個の人間としての自分。
 その両輪を回しながら生きていくにはどうすればよいか。

 「幼な子われらに生まれ」は、そんな悩みを抱えている方におすすめしたい名作です。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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