笑いたければこの一冊!佐藤愛子「九十歳。何がめでたい」

評価:★★★★★

 ポックリ死はいうならば「クラーク・ゲーブルとのキス」なのだ。
(本文引用)
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 たまに実母(今年で80歳)に会うと、驚くことがあります。

 私の子ども(すなわち孫)の書道の先生を見て「まだあんなにお若い方が、教えていらっしゃるのねえ!」
 ちなみにうちの子の書道の先生は、どう若く見ても70歳ぐらいです。

 そしてある日、私が母に教わったように洗濯物を干していると「××ちゃん(私のこと)すごい! こうして干すと、確かに乾きやすいわよね。××ちゃんはやっぱり賢いわぁ~!!」
 そこで私が「えっ? この干し方、お母さんに教わったんだよ」と言うと、
 「えっ? そうだった?」と全く覚えていない様子。



 ちなみに先日、「これから劇団四季の『アラジン』を観に行きます」とメールをしたところ「それは楽しみですね!いってらっしゃい」との返信が。
 そして翌日、「アラジン」のパンフレットを持って実母と会ったところ「まあ、『アラジン』を観に行ったの? それは素敵な体験をしたのねえ!」と顔をパアアッと輝かせていました・・・。
 完全に「初めて聞いた!」といった表情でした。

 毎日のようにダンスの練習に行くし、親せきの法事にも一人で新幹線に乗って行けるぐらいなのでボケてはいないと思うのですが、それなりに老人力がついているようです。

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 まあ私も最近、30代半ばの人を「若い人」と言っているし、山崎賢人君と野村周平君の区別が全くつかない状態なので似たようなものでしょう。
 
 前振りはここで置くとして、現在大ベストセラーとなっている「九十歳。何がめでたい」を読みました。
 正確に言うと「何がめでてぇ!」といったところなのでしょうが、タイトルではちょっと上品に「何がめでたい」となっています。

 でも、著者・佐藤愛子さんの心の中では「めでてぇ!」になっていることと推察されます。

 本書は、佐藤さんが常日頃思っていることを綴った・・・と言いますかブチまけたエッセイ集ですが、評判どおり声を出して笑ってしまいました。
 
 それも「ウフフ」なんてものではありません。「ドハッ!」といった声です。

 いわゆる電車の中では読めない類の本ですね。個人的には、リリー・フランキーとナンシー関の対談集「小さなスナック」と併せて読めば、美味しさ倍増ではないかと思いました。

 エッセイはまず、タイトル通り「卒寿で何がめでたいんだ!」といった叫びから始まります。
 
 その後は新聞の人生相談に対する突っ込み、事件・事故の裁判に対する苦言、いたずら電話撃退法、やる気のないテレビ番組に対する怒りetc.
 どれもこれも「よくぞ言ってくれた!」と膝を打ち抜きたくなる内容で、読み終えた後はあースッキリ(こう思えるのは、私も年をとったから?)。



 その破壊力たるや「胸のすくような」という言葉では表しきれないものです。
 尾崎豊なら「佐藤先生、あなたは強き老人の代弁者なのか」(語呂が悪くてすみません)と歌いあげるところかもしれません。

 なかでも私が大いに気に入ったのは「ソバプンの話」
 ソバプンとは、ソバにいくとプンと臭うような人のこと。つまり不潔な人のことを指します。

 そもそもなぜソバプンの話になったかというと、新聞の人生相談に、こんな相談が載っていたから。 

「彼は2週間以上も同じ服を着続けています。入浴もしていないようで、強烈な臭いを放っています」

 そして相談者はこう語ります。 

「その彼と、実習で同じ班になってしまいました。マスクをしても臭いは防げず、触診の課題では彼に触れなければなりません」

 相談者の女性は医療系の大学に通っているのだそうです。 

「そのことを考えると、不安で夜も眠れません。このままでは大学に通えなくなりそうです」

 
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 得てして、女性に比べると男性は「臭い」場合が多いように思います。
 男性のタレントさんは、よく「いいにおいがする」と聞きますが、そんな言葉を聞くと「何を食べて生きてるんだろう?」とすら思います。
 私個人の意見としては「男はかなりの確率で、ある程度臭い」です。
 でもきっと、このソバプン君は常軌を逸した臭さなんでしょうね。ふーむ。

 そこで佐藤愛子さんは、回答者の言葉を読み、こう言い放ちます。

「これはエライ世の中になったものだ」

 もうここからは笑った笑った!
 確かにソバプン君の問題は深刻かもしれません。でも、この佐藤先生の答えを読み大声で笑っていたら、何だかむしろソバプン君に愛着すら湧いてきてしまいました。

 この「ソバプンの話」だけでも、本書を買う価値はおおいにあり!
 その後、相談者さんがどうされたのかは知りませんが、何とかソバプン君と共生するか、ソバプン君が改善されていることを密かに祈っています。

 その他、「懐かしいいたずら電話」も最高!
 無言電話に対しさんざん試行錯誤をした結果、こう佐藤さんがつぶやいたのには思わず「ドハッ!」 

私は被害者から加害者に転じたのである。

 
 この本があまりにも面白かったので、今わが家では「●●歳、何がめでたい」と言うのが流行っています。

 もう本当にね、不惑も過ぎると「何がめでたい」という心境になってきます。

 でもやっぱり生きて、何か感じて、何かに笑って何かに毒づいて、何かに常に疑問を持って人生を転びながらでも疾走するって、面白くって何よりめでたいことなんだなと改めて思いました。

 何歳になっても、生きているかぎりやっぱりめでてぇ!

 そう叫びたくなる快作です。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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