忘れられない人がいる方におすすめ!森絵都「出会いなおし」

評価:★★★★★

 「ちょっと考えちゃって」
 「何を」
 「発砲事件がなかったら、そのサラダもなかったかもって可能性」

(本文引用)
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 とにかく「ハズレなし」の作家・森絵都さん。
 「みかづき」で頂点に達したかと思いましたが、この「出会いなおし」でさらに迫力が増した気がします。
(「みかづき」のレビューはこちら

 最新刊「出会いなおし」は、タイトル通り「再び出会った人同士」を描いた物語です。

 それほど親密というわけではなかったけれど、何となく気になっていた「あの子」。
 初めての出会いで猛烈に腹が立ち、二度目の出会いでそれがストンと腑に落ちた「あの男」。
 目の前からいなくなったはずなのに、突如自分と息子の前に現れた「亡き妻」。



 「出会いなおし」は再会のパターンをとことん突き詰めた短編集。
 
 もし今、忘れられない人がいて苦しんでいたら、ぜひ読んでみてほしい一冊です。
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 本書には6編の物語が収められています。
 いずれも「出会いなおし」=「再会」をテーマとした物語ですが、なかでも強烈なのが第2話「カブとセロリの塩昆布サラダ」です。

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 日経新聞の「目利きが選ぶ今週の3冊」では、最終話「青空」がとりあげられていたのですが、私はこの「カブとセロリの塩昆布サラダ」の方が好き。
 スタートから終わりまで、間断なくアップダウンしまくるジェットコースターのような物語で、ラストも見事なひねりが効いており、思わずうなりました。

 森絵都さんには、これからどんどんミステリーも書いてほしいですね。
 横山秀夫級の名作が次々と誕生するのではないでしょうか。
 (ちなみに「青空」は、親子で乗っていた車に、前を走っていたトラックのベニヤ板が突っ込んでくるという物語。これはぜひ「世にも奇妙な物語」あたりでドラマ化してほしいですね。)

 さて、この「カブとセロリの塩昆布サラダ」ですが、あらすじはこうです。

 ある日、清美は駅で男性に突き飛ばされます。
 男が謝罪もなく立ち去ったため、清美は一気に心がブルーに。
 その気分を立て直すために、清美はデパ地下でサラダを買おうと決めます。

 ところがここでひと悶着。

 清美は「カブとセロリの塩昆布サラダ」を買ったにもかかわらず、帰宅して封を開けると、どうみてもそれはカブではなく大根。いくら食べても大根なのです。

 清美は店に苦情の電話をかけますが、担当者である藤木は決して非を認めようとしません。

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 清美は何としてでも、サラダに入っている野菜はカブではなく大根であると認めさせたい。
 藤木は何としてでも、サラダに入っている野菜はまぎれもなくカブであると認めさせたい。


 さて軍配はどちらに?
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 この物語は、まるで「発言小町」のアクセスランキング・レス数ランキング共に第1位の投稿を読んでいるような濃厚さ
 最後まで、どちらの主張が正しいのか、その正しさをどうやって証明するのかにヒヤヒヤしっぱなしです。

 その結末は、意外な形で清美の胸をスッとさせるものなのですが、ここでもう一段階。

 サラダの一件から、過去に一気に引き戻されるような「出会いなおし」が訪れるのです。

 この「カブとセロリの塩昆布サラダ」は、世に数多ある短編のなかでも秀逸なものです。
 こんなことを言っては、もしかすると森絵都さんに失礼なのかもしれませんが、森絵都さんは向田邦子さんの再来といえるのではないでしょうか。

 もちろん森絵都作品は長編も面白いです。最後まで全く疲れを見せない筆致には、作家としての図抜けた体力のようなものを感じます

 そして短編はまた、そのずば抜けた体力・胆力・筆力がさらに凝縮されているような気がします。

 とにかく森絵都さんの小説はうまくて濃い

 読むたびに「一生ついていくわ!」と言いたくなる作家さんです。

 実に色とりどりの「再会」をつづった名短編集「出会いなおし」。

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 今、最も熱い作家・森絵都さんの世界にどっぷりと浸かりたい方にオススメの一冊ですよ。

 あと、どうしても忘れられない人がいる方にも、ね。

詳細情報・ご購入はこちら↓


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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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