いじめられている人・いじめている人へ・・・。あさのあつこ「復讐プランナー」

評価:★★★★★

 「他人をいじめるやつって必ずそう言うんだよな。『あたしのせいじゃない』『いじめたつもりは、ない』って。ほんと、必ず言うんだ」
(本文引用)
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 新学期の季節になると、いつも胸がズキズキと痛みます。
 それは日本のどこかで必ず1人、自ら命を絶つ子がいるからです。

 その原因はたいてい「いじめ」。

 新学期直前や新学期に入って間もない頃に「中学生が列車のホームから飛び降りた」などと聞くと、涙が止まらなくなります。
 休み中、どんな気持ちで日々を過ごしていたことか。新学期など来なければいいと、どんなに願っていたことか。
 その心情は察するに余りあるものです。

 そんな新学期におすすめしたい小説が、この「復讐プランナー」。
 「バッテリー」などでおなじみの青春小説の大家、あさのあつこさんの作品です。 

 「どうしたらいじめから抜け出せるだろうか」と考えて書き始めました。

(漫画「いじめ ~心の中がのぞけたら~」内コラム「いじめ 伝えたいこと」より)

 あさのあつこさんが「いじめ」に対する思いをぶつけた小説「復讐プランナー」。

 「復讐」なんて聞くと何やら物騒な気がしますが、さて、どんな小説なのでしょうか。






●あらすじ



 深沢雄哉は、私立の中高一貫校に通う男の子。
 実は最近、家でため息ばかりついています。

 その理由は「いじめ」にあっているから。
 しかもそれは金銭を脅し取られるという、非常に悪質なものでした。

 元々は親友の章司が脅されていたのですが、ターゲットが変わり、脅しの対象は雄哉に。

 その様子を知った先輩・山田は、二人にある提案をします。

 それは復讐ノートをつけること。
 妄想レベルのものから実現可能なものまで、復讐計画をノートに次々と書いていくのです。 

「例えばだよ、例えば。おまえたちがどんな復讐をしたいか。まずはそれをノートに書く。箇条書きでも、書きなぐってもかまわない。頭に浮かんだ復讐方法をともかく、どんどん書いていく。かたっぱしから書いていく。その次にそれを実現の可能性がありそうな順に並べていくんだ。そしたら、まぁ『ライオンの群れの中に裸で放り込む』とか『ジャンボジェットの尾翼にくくりつけて、ニューヨークまで運んじゃう』なんてのは、最後の方になっちゃうだろう」

 山田はその後も、復讐ノートの書き方を詳細に説明し、さらにこれを仕事形式にすることを勧めます。

 その仕事の名は「復讐プランナー」。

 さて復讐プランナー計画は、雄哉と章司をいじめから救うことができるのでしょうか?

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●「復讐プランナー」感想



 この小説の結末は、ものすごく深い!です。
 そこはさすが、あさのあつこさんと言うべきなのでしょう。上滑りな解決ではなく、一生ものの「真の」解決法がここにはあります。

 「復讐ノート」「復讐プランナー」という言葉だけで想像すると、もしかするとちょっと拍子抜けするかもしれません。

 でも、「復讐プラン」という言葉から容易に想像できる方法だと、それは本当に解決したことにはならないのです。
 この「復讐プランナー」は、タイトルを逆手に取り、そんなことを私たちに教えてくれます。

 本書に書かれている解決法だと、残念ながら世の中から「いじめ」を撲滅することはできないでしょう。

 でも、「いじめ」による自殺はなくすことはできる。それだけは保障できます。

 そして、いじめている子に少しでも罪悪感があれば、この「復讐プランナー」計画は特効薬となるはず。
 対象となっている「いじめ」は、嘘のようになくなることでしょう。

 私は今まで「どうすれば『いじめ』はなくなるのか」ばかりを考えていました。
 
 知り合いのお子さんが不登校になっていたり、小学校時代の同級生が転校先の中学で激しいいじめにあい、それから引きこもりになっていたり・・・。

 そんな話を聞くたびに、「どうすれば『いじめ』はなくせるのか」に思いを集中させていました。

 でも、はっきり言って「いじめ」はなくせないんです。人間がいるかぎり「いじめ」はあるんです。

 だからこそ、この「復讐プランナー」は読む価値がある小説といえます。

 人間がいるかぎり「いじめ」はある。

 でも、人間がいるかぎり、こうも言えるのです。

 「あなたはひとりじゃない、決してひとりぼっちじゃない」。

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 もし今、いじめで苦しんでいたら、この「復讐プランナー」をお手に取ってみてください。

 薄いのですぐに読めますが、得るところは非常に大きいです。
 そして、この小説の最後のフレーズを心の中で唱えてください。

 何だか偉そうに書いてしまいましたが、それが私の心からの願いです。

 本書にはもう一遍「星空の下で」も掲載。
 「復讐プランナー」として歩き出した雄哉・章司・山田の3人の活躍が、非常に心地よい快作です。

 「復讐プランナー」「星空の下で」
 二編併せてご堪能ください。

 いじめられている人、いじめている人・・・そのいずれかで苦しんでいる人に心からおすすめの一冊です。

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この本もおすすめ!↓

漫画ですが、いじめられている子、いじめている子の心が
非常に緻密に描き出されています。

今現在いじめに悩んでいなくても、「人の心」を知るのに非常に役立つ一冊です。
何度でも読み返したい、素晴らしい本だと思います。

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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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