「アメトーーク!」で読書芸人がおすすめ!角田光代「森に眠る魚」

評価:★★★★☆

私が手に入れられないものを、なぜあの女が手に入れなければならない。
(本文引用)
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 昨年の「アメトーーク!」読書芸人で紹介され、注目されている一冊。
 オードリー・若林正恭さんのおすすめだそうである。

 乳幼児を抱えた母親同士の争いというのは、もはや「大衆にウケる小説」の大定番。
 小説でもドラマでもママ同士の醜い競争を描けば、とりあえず人気が出るといった具合である。

 そのなかでも、この「森に眠る魚」は秀逸。

 子どもを持った女性の焦燥感や劣等感や「格付けしたい感」が、微に入り細を穿つ筆致でこれでもかと描かれている。

 はっきり言って「なぜそんな人とズルズル付き合っているんだろう?」と不思議に思う場面も多々あった。
 しかしそう思ってしまうのは、著者の仕掛けた罠にはまった証拠なのだろう。



 つきあいをやめれば一発で解決するのに、それができないもどかしさ。
 そのじれったさに快感を覚えながら読んでいる私が、もしかするといちばん意地悪な母親なのかもしれない。

 そんな気持ちになりながら、一気に読んだ。
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 舞台は東京の文教地区。
 そこで出会った5人の女性は、皆同様に乳幼児を抱えている。
 しかしそのうち、互いを疑いの目でみるようになる。

 小学校受験なんてさせないと言いつつ、本当は名門校をねらっているのではないか。
 ボランティア活動をしているのは、受験に有利だからではないか。
 なぜ、私に声をかけてくれなかったの?
 それでお金をとるって、どういう神経なの?

 5人の間に膨れ上がる憎悪は、日に日に肥大していく。
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 改めて、劣等感というものの真の恐ろしさを垣間見た気がする。

 劣等感は、まず他人と自分を比較して沸き起こる気持ちだ。
 その「他人と比較する」という気持ちは実に便利なもので、自分を女王様にも悲劇のヒロインにもしてくれる。
 他人にうわべだけチヤホヤしてもらうためには、とりあえず「私は●●さんと比べて」と言っておけばすむのである。

 しかしその「他人と比較する」ことの副作用は思いのほか強い。
 他人と比較すると、優越感や劣等感をもつ。優越感はまだしも劣等感をもつと、人間は実に厄介だ。

 なぜなら劣等感を持つと、人は他人を疑うようになるからである。
 「私を置いて、何か良いことをするのではないか」「ブスで馬鹿で貧乏な私に、あの人が声をかけてくれるのは何か裏があるに違いない」
 そして、そんな猜疑心は次第にこうなる。

 「あの人だけ幸せになるのは許さない」

 「森に眠る魚」に出てくる女性のうち、トラブルのもととなっている人物はいずれも劣等感が強い。
 そして負のパワーというものは強いので、他人もその劣等感と猜疑心に引きずられてしまう。

 これは実生活でも十分起こりうることで、「良い人」ほど道連れになりやすい。
 本書を読み、劣等感と猜疑心でグルグル巻きにされた女性たちを客観的に見ることで、そこから抜け出す方法を見出すことができるだろう。

 もし現在、子どもを通しての人間関係で悩んでいるのなら必読。
 悶絶する5人の姿を読みながら「私ならこうするのに」と思う瞬間があるはずだ。

 それがあなたにとって、最適な解決策である。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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