最高に愛しい人と読んでほしい!「人生を変えてくれたペンギン ~海辺で君を見つけた日~」トム・ミッチェル

評価:★★★★★

 たかがペンギンだ。だが、あんなペンギンはいなかった!
(本文引用)
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 小説で泣くのも好きだが、実話で泣くのはもっと好きだ。
 泣かせようと思って作られたものではなく、ただそこにある事実が「泣ける」ものであること。
 この世にそのような出来事が存在するというだけで、胸がブルブルと震えてしまう。

 「人生を変えてくれたペンギン」は、まさにそんな一冊。

 一羽だけ生き残ったペンギンと若き教師との邂逅は、「愛」というものを心から信じさせてくれるエピソードだ。

 ノンフィクションで、これほどまで泣きに泣きに泣いたのは、いつ以来か。もしかすると初めてかもしれない。






●あらすじ


 イギリス人のトムは、小学校の教師だ。
 冒険心にあふれるトムは、寄宿学校の教員としてアルゼンチンに赴任。
 ウルグアイで休暇を過ごしている時に、運命の出会いは起こる。

 重油とタールに覆われた海岸で、トムはペンギンが大量に死んでいるのを発見する。
 
 トムはその光景に胸を痛めるが、何とそこに一羽だけ生き残ったペンギンがいた。

 このままではペンギンが窒息してしまう。そう思ったトムは、ペンギンをリゾートマンションに持ち帰り、徹底的に体を洗う。
 その後、トムはペンギンを海に帰そうとするが、もはやそのペンギンは、海で泳げなくなっていた。

 トムはついにペンギンを、アルゼンチンの自宅に連れていく。

 ペンギンはファン・サルバドールと名づけられ、トムの家族となり、トムの学校のアイドルとなる。



●「人生を変えてくれたペンギン」のここが面白い!


 動物と人間との触れ合いは、感動ものの鉄板といえるだろう。
 しかし本書は、他の「動物もの」とは一線を画する作品だ。

 まず、飼う動物がマゼランペンギンというのが珍しい。
 犬や猫のようにそうそう出会えるものではないし、しかも大量の重油とタールと死体にまみれたなかで出会ったというのも、非常にレアなパターンだ。

 また、トムとペンギンを囲む状況もかなり特殊だ。

 無政府状態に陥り、著者自身もテロリストと間違えられるようなアルゼンチン。
 そんな不安が渦巻くなかで繰り広げられるトムとペンギンの生活は、さながら吹雪の山中に仄見える温かい灯りだ。

 そんな、何から何まで風変わりなトムとペンギンだが、これだけは変わらなかったようだ。

 それは「無償の愛は全てを救う」ということだ。

 特にトムの学校の生徒たちの変貌が、それを表している。

 たとえば、ペンギンと子どもたちとの間に生まれる無償の愛は、子どもたちに活力をもたらす。

 引っ込み思案で学校にもなかなか来られなかった少年が、学校の屋上のプールでペンギンと泳いでいるうちに、実は自分が泳げるということに気づいていく。

 見事なフォームで泳げるのに、今までそんな自分の才能に気づくことができず、「僕は泳げるの?」とビクビク周囲に聞いてばかりいた少年。
 彼は、誰も見ていない、いや、ペンギンだけが見ているプールでペンギンと泳ぐうちに、「実は自分は泳げる」ということを認識していくのだ。

 ペンギンは当然ながら、誰のことをも批難をしない。否定もしない。可愛い目で人間たちを見つめるだけだ。

 そんなペンギンとの関わりは、子どもたちに自信を持たせ、本来の自分を取り戻していくチャンスを与えた。

 そして、誰かを心から愛し慈しむという感情をも芽生えさせた。

 経済状態も悪く、国家全体が緊迫感と荒涼感に満ちた空気のなかで、ペンギンの存在はどれほど周囲の心を温めたことか。

 さまざまな点で特殊な状況であり、決して恵まれているとはいえない環境のなか、全く見返りを求めない愛でつながっていく人間とペンギン。

 愛がいかに人間を変え、人生を前向きなものにしてくれるか。

 それは、ちょっと口に出すのは照れくさいことだ。
 でも、それは同時に生きていくうえで決して忘れてはいけない大切なことだ。

 その意味で、まさにこのペンギンは人々の人生を変え、この本もまた人々の人生を変える力を持っているのだ。

 

●まとめ


 とにかく、何も考えずに泣きたい。そうお思いの方には、全力でおすすめしたい一冊だ。

 さらに本書は、ただ泣けるだけではない。
 人間がこの世に生きる意味や、国家や政府を作る意味、そして誰かを何かを愛する意味についても十分すぎるほど考えさせてくれる本だ。

 だから本書は、自分にとって最高に愛しい人と共に読んでほしい。

 自分がどれだけあなたを愛しているか、そして、あなたとどんな人生を歩み、この世界でどんな風に生き、どのようにして世の中に貢献していきたいか。

 二人の姿をトムとファン・サルバドールの姿に重ね合わせて、心ゆくまで純粋な愛に浸り、未来図を描いていただきたい。


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ラストで、宇多田ヒカルさんの「花束を君に」が脳内で流れて仕方がなかった。
そしてもう号泣につぐ号泣・・・。
終盤はぜひ、この曲をバックに流しながら読んでいただきたい。


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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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