真山仁「バラ色の未来」。日本にカジノは毒か薬か?ギャンブル依存症の問題は?
評価:★★★★☆
「この大キャンペーンって、未来がバラ色だと勝手に決めつけて、欲望に溺れた挙句に破滅した人間の愚かさを暴くのが目的ですよね」
(本文引用)
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ある日、都内でホームレス男性の死体が発見される。身元を調べると、何と彼は元町長。
青森県の小さな町で長を務め、日々町おこしに腐心し、豪奢な家で暮らしていた男性だった。
そして彼の嫁と孫は、火災で死亡する。
なぜ彼はそこまで転落したのか。なぜ家族は非業の死を遂げねばならなかったのか。
その裏には、熾烈なカジノ誘致合戦が潜んでいた。
「バラ色の未来」は、人間のとどまることを知らない欲望を深くえぐっている。
誰も「バラ色の未来」なんて保障していないのに、ちょっとお金が入りそうな話を聞けば、すぐに目の前がバラ色になってしまう。
しかし、楽をしてバラ色の日々を送ることなど決してできない。
本書は、欲にくらむ人間の目を残酷なほどパチッと覚まさせてくれる物語だ。
そしてまた、IR推進法案の問題点にも鋭く斬り込んでいる。
昨年、IR推進法案が可決・成立した。統合型リゾートと言えば聞こえは良いが、要するにカジノを日本で許可する法案だ。
政府はギャンブル依存症対策などを練っているようだが、成立してもなお「反対」の声は多い。
その「反対の声」をねじ伏せようとする政府と、その卑劣さ狡猾さと闘うマスコミ。
ホームレス男性の死をきっかけとして、政府とマスコミが真っ向からぶつかる様子には息を呑む。
実際にもこんなバトルが繰り広げられているのではないかと、今すぐにでも国会議事堂や記者クラブにでも駆け付けたくなるほどだ。
ここまでリアリティたっぷりに描けるところが、さすが真山仁である。
現在、朝日新聞「患者を生きる」でギャンブル依存症の治療について書かれているが、その重症度には驚かされる。
記事によると、ギャンブル依存症とアルコール依存症は同じだという。
アルコール依存症の患者が、お酒が並ぶ自動販売機を見て心がうずくように、ギャンブル依存症の患者はスポーツ新聞のパチンコの広告記事でも震えがくる。なけなしの金をはたいてパチンコに行きたくて仕方がなくなる。
実際に日本にカジノが開かれてみないと、どうなるかはわからない。
しかしギャンブル依存症対策が万全でないうちに、勇み足で解禁するのはやはり危険であろう。
カジノ解禁に向けた、政府やマスコミの動きに今後注目したい。
そしてまた本書を読むと、人は皆「何か」の依存症であることがわかる。
カネ、地元、家族・・・何かを守るため、何かを得るために必死になると、人間は周りが見えなくなる。
気がつけば、車ごと海に突っ込もうとしているかもしれない。
そんな人間の脆さを、この物語は容赦なく描いている。
人間が幸せになる最良の方法は、毎日、こう唱えることなのかもしれない。
「バラ色の未来」なんてない、と。
「この大キャンペーンって、未来がバラ色だと勝手に決めつけて、欲望に溺れた挙句に破滅した人間の愚かさを暴くのが目的ですよね」
(本文引用)
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「捕らぬ狸の皮算用」――この小説を一言で表すと、こういうことだ。
それが狸一匹ならまだいい。そして、狸のために家財も何もかも売り払ったというわけでないのなら、まあいい。
しかしお金がドロンと枯葉になった瞬間、何もかもが崩れ落ちる。
真山仁の新刊「バラ色の未来」は、そんな危機感に満ち満ちている。
正義漢・真山仁ならではの熱い一冊だ。
それが狸一匹ならまだいい。そして、狸のために家財も何もかも売り払ったというわけでないのなら、まあいい。
しかしお金がドロンと枯葉になった瞬間、何もかもが崩れ落ちる。
真山仁の新刊「バラ色の未来」は、そんな危機感に満ち満ちている。
正義漢・真山仁ならではの熱い一冊だ。
●あらすじ
ある日、都内でホームレス男性の死体が発見される。身元を調べると、何と彼は元町長。
青森県の小さな町で長を務め、日々町おこしに腐心し、豪奢な家で暮らしていた男性だった。
そして彼の嫁と孫は、火災で死亡する。
なぜ彼はそこまで転落したのか。なぜ家族は非業の死を遂げねばならなかったのか。
その裏には、熾烈なカジノ誘致合戦が潜んでいた。
●「バラ色の未来」のここが面白い!
「バラ色の未来」は、人間のとどまることを知らない欲望を深くえぐっている。
誰も「バラ色の未来」なんて保障していないのに、ちょっとお金が入りそうな話を聞けば、すぐに目の前がバラ色になってしまう。
しかし、楽をしてバラ色の日々を送ることなど決してできない。
本書は、欲にくらむ人間の目を残酷なほどパチッと覚まさせてくれる物語だ。
そしてまた、IR推進法案の問題点にも鋭く斬り込んでいる。
昨年、IR推進法案が可決・成立した。統合型リゾートと言えば聞こえは良いが、要するにカジノを日本で許可する法案だ。
政府はギャンブル依存症対策などを練っているようだが、成立してもなお「反対」の声は多い。
その「反対の声」をねじ伏せようとする政府と、その卑劣さ狡猾さと闘うマスコミ。
ホームレス男性の死をきっかけとして、政府とマスコミが真っ向からぶつかる様子には息を呑む。
実際にもこんなバトルが繰り広げられているのではないかと、今すぐにでも国会議事堂や記者クラブにでも駆け付けたくなるほどだ。
ここまでリアリティたっぷりに描けるところが、さすが真山仁である。
●まとめ
現在、朝日新聞「患者を生きる」でギャンブル依存症の治療について書かれているが、その重症度には驚かされる。
記事によると、ギャンブル依存症とアルコール依存症は同じだという。
アルコール依存症の患者が、お酒が並ぶ自動販売機を見て心がうずくように、ギャンブル依存症の患者はスポーツ新聞のパチンコの広告記事でも震えがくる。なけなしの金をはたいてパチンコに行きたくて仕方がなくなる。
実際に日本にカジノが開かれてみないと、どうなるかはわからない。
しかしギャンブル依存症対策が万全でないうちに、勇み足で解禁するのはやはり危険であろう。
カジノ解禁に向けた、政府やマスコミの動きに今後注目したい。
そしてまた本書を読むと、人は皆「何か」の依存症であることがわかる。
カネ、地元、家族・・・何かを守るため、何かを得るために必死になると、人間は周りが見えなくなる。
気がつけば、車ごと海に突っ込もうとしているかもしれない。
そんな人間の脆さを、この物語は容赦なく描いている。
人間が幸せになる最良の方法は、毎日、こう唱えることなのかもしれない。
「バラ色の未来」なんてない、と。
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