新書大賞受賞!橘玲「言ってはいけない」は、幸せな人生への処方箋!

評価:★★★★★

 私は、不愉快なものにこそ語るべき価値があると考えている。
(本文引用)
______________________________

 「新書大賞2017」受賞作。ちなみに昨年の受賞作は「京都ぎらい」だった。
 
 受賞要件に「誰かが不愉快な気持ちになるような内容」という項目でもあるのだろうか。
 そんなことを思いながら「言ってはいけない ~残酷すぎる信じる~」を手に取った。

 結局、私にとっては全く不愉快ではなかった。
 トンデモ本のようなものを想像していたが、思っていたよりも遥かに理路整然とした内容で、とにかく痛快。
 不愉快になるどころか、むしろ気持ちが明るくなったほどだ。



 人間は生まれながらにしてそういうもの――そんな身も蓋もないというか、それを言っちゃあおしまいよ、といったことを突き付けられると、ここまで心が楽になるものかと我ながら驚いた。

 「言ってはいけない」というが、いっそ本書の内容をどんどん言ってしまったほうが、世の中が平和になるような気がする。



●概要


 本書のコンセプトは、この1行で表される。 

ひとは幸福になるために生きているけれど、幸福になるようにデザインされているわけではない。

 本書では、徹頭徹尾「生まれながら持っているもの」に焦点を当て、個人個人の生き方を解説していく。
 
 男か女か、顔立ちが美しいか否か、親の素行が良いか悪いか、人種はどうかetc.

 著者は膨大なデータから、その2つの間に起こる様々な格差を分析。
 そこには、きれいごと抜きの残酷な真実があった。



●「言ってはいけない」のここが面白い!


 本書の魅力は、独特のデータ分析。ギョッとするような思いもよらない方法で、人間の性質をどんどん割り出していく点だ。

 たとえば、「反社会的行動を起こす人間」を分析する方法には度肝を抜かれた。
 一般的には、生育環境や家族構成など外からの影響にそって解説される。
 しかし、何が何でも生来のものにこだわるのが本書の持ち味。何と「心拍数」から、反社会的人間になる確率を割り出すのだ。

 神経犯罪学者エイドリアン・レインによると、反社会的行動をとる学生は、安静時の心拍数が低いという。
 さらにレイン氏は、15歳までに反社会的な行動をとった人間のうち29歳までに犯罪者になった者と、その後、反社会的行動が収まった者とを比較。
 後者は前者に比べて、安静時の心拍数がかなり高いことがわかったという。

 その理由は本書を読めば、納得すること間違いなし。
 しかしだからといって、このデータを実際の裁判で使うのは、とてもじゃないけど無理であろう。そこが「言って良い」と「言ってはいけない」の差なのである。

 ちなみに「反社会的行動を起こす人間」が持つ体質は、爆発物解体の専門家や大企業の創設者、世界を切り拓く冒険家になるなど、使い方によっては社会にプラスに働くという。

もしその子どもが知能や才能に恵まれていれば、社会的・経済的にとてつもない成功を手にするかもしれない。そもそもベンチャー企業の立ち上げなど、恐れを知らない人間にしかできないのだ。



 反社会的人間の特質を生かして、逆に社会に大きく貢献する人もいる。そんな側面をきっちり紹介する点も、本書に深みを与えている。
 
 また、男女にまつわる分析も非常に面白い。
 
 一般に、容姿で人生に差がつくのは女性と思いがちだ。
 しかし実は男性の方が、美貌格差が大きいという。その分析と解説は、現在就職活動中の男性にとって必読ものだ。
 
 たまに差しはさまれるコラムにも、思わずうなる。

 コラムは本文部分とはやや異なり、細かな実験データなどは出てこないフランクなものだ。
 しかしその分析は、一見メチャクチャなようでゾッとするほどの説得力がある。
 どれもこれも、すぐに誰かに話したくなるような内容だ。

 なかでも「女子校ではなぜ望まない妊娠が少ないのか」には、膝を叩いた。
 
 大事な娘の進学先を、共学にするか女子校にするか男女別学にするか。
 お子さんと進路を考える際や入学後のアドバイスに、必ず役立つことだろう。 

 

●まとめ


 「馬鹿は遺伝なのか」

 

 「差別のない平等な社会をつくれないワケ」

 

「『高貴な血』と『穢れた血』」

 ・・・目次に並ぶ言葉はどれも刺激的だ。

 しかし本書を読むと、それは刺激的なものではなく、むしろ人に対して優しいものであることがわかる。
 本書があぶり出す「言ってはいけない」ことは、幸せに近づくための最短かつ確実な切符だ。逆に、世の中がややこしいのは「言ってはいけない」ことから目を背けてしまうからだ。

 個々人が生まれ持っているものに、理不尽な思いをすることもあるだろう。やり場のない怒りを覚えることもがるだろう。

 しかしそれを「努力を怠ったせい」にすれば、果たして怒りはおさまるのか? 

 むしろ逆であることの方が、多いのではないだろうか。

 「言ってはいけない」が暴く事実は、人を不愉快にするものではない。むしろ、人を優しくし、生きやすい社会をつくる処方箋となるものだ。

 努力が報われず虚しい、常に劣等感がある、世の中に対してモヤモヤムシャクシャした思いを抱いてしまう。

 そんな方に、本書はおすすめ。
 ひとしきり心地よい諦観を味わった後に、自分にしかない人生を颯爽と歩くことができるだろう。

詳細情報・ご購入はこちら↓


関連記事
プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告