市川憂人の「ジェリーフィッシュは凍らない」 が面白い理由は、ここにあり!

評価:★★★★★

 自分たちが何か、とてつもない勘違いを犯しているような、そんな思いが頭を離れない。
 でも、何を? 一体何を――。

(本文引用)
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  第26回鮎川哲也賞受賞作にして、「原書房 2017本格ミステリ・ベスト10」の第3位にランクインした話題作だ。

 「これぞ、本格的なミステリー」との評価があちこちで聞かれ、そのたびに「本格的なミステリーとは何ぞや」と思っていた。が、読んでみて納得。

 「これは、確かに本格的だ」。

 最初から最後まで、そう思わずにはいられなかった。

 本書を読み、初めて「本格ミステリー」の意味がわかった。

 本格ミステリーとは、謎解きが小手先や上滑りのものではないもの。



 作中の刑事もページをめくる読者も、答を出してはことごとくくじかれ、最後の最後まで犯人の仕掛けに翻弄されながらも、真相はストンと腑に落ちる。
 そんなミステリーを、本格ミステリーというのだ。



●あらすじ



 ある日、小型飛行船ジェリーフィッシュが山中に墜落。乗組員6人全員の死亡が確認される。

 しかし警察が調べるうちに、奇妙な事実が次々と判明する。

 ジェリーフィッシュは墜落したのではなく単なる不時着で、乗組員の死亡は別の理由によるものなのではないか。事故死ではなく他殺なのではないか。
 世界的な技術の粋を集めたにも関わらず、墜落したジェリーフィッシュ。そして6つの死体。その深すぎる謎に、警察は頭を悩ませるが・・・?



●「ジェリーフィッシュは凍らない」のここが面白い!



 本書でまず目を引くのは、独特の構成だ。
 墜落前の乗組員たちの様子と、墜落後の警察の捜査・推理とが交互に書かれているため、いわば「問い」と「答え」がワンセットになった状態なのだ。

 よって、読者はドリルか問題集を解いているような気持ちになれる。

 事故に潜む謎を1つひとつ掘り起こし、推理をしては打ち砕かれ、また別の視点で考え直す。事故を捜査する警察とともに、問いと答えの繰り返しに挑戦できるというこの快感は、そんじょそこらのミステリーでは味わえない。

 その「問い」のなかには、たとえばこんな問題が含まれる。 

「いい? たとえ真相がどんなものだろうと、可能性はたった二つしかないのよ。
犯人は、試験機の中で発見された六人の中にいる。
犯人は、試験機の中で発見された六人の中にはいない」

 その問いに対し、次の章では事故直前のジェリーフィッシュの様子がプレイバックされる。
 仲間が次々と息絶え、疑心暗鬼に陥る乗組員たち。警察の推理と、当時の阿鼻叫喚の様子とがリンクし、徐々に真相が顔を出す展開には体の奥からゾクゾクする。



●まとめ



 専門的な科学用語が多数登場し、登場人物のキャラクターや会話が翻訳小説を思わせるものなので、最初はややとっつきにくさを感じた。
 
 しかし、読み始めてすぐにストーリー構成と展開の面白さにグイグイ惹きこまれた。
 「21世紀の『そして誰もいなくなった』」と噂されているが、登場人物らの閉塞感や猜疑心、謎の深さはそれ以上かも。

 そして何といっても、「問いと答えの繰り返し」という構成が魅力的であり魅惑的だ。
 1つひとつ謎を虱潰しに当たっては、消去法のごとく解決していく。そんな展開なので、警察と一緒にああでもないこうでもないと考えをめぐらすことができる。

 物語の中にどっぷりと入り込んでミステリーをとことん堪能したい、という方には非常にお薦めの傑作。
 そして読みながら、警察と一緒にこのセリフを叫んでいただきたい。 

「・・・・・・狂ってるわ、どこの推理小説よ」



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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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