これは森見登美彦ファン必読!?アニメ「夜は短し歩けよ乙女」の前に、この「恋文の技術」を読んでみよう。

評価:★★★★★

 そもそも私はまどろっこしい男であり、時代に逆行するのも望むところだ。
 そういうわけで、こんな小説を書いたのです。

(「あとがき」より)
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 もう~、な~んてキュートな小説なのかしら!図らずも思いっきり胸キュンしてしまった。
 森見作品は、主人公がいつも一生懸命で、時に無様なほど真面目な可愛らしい人が多いが、本書の主人公はまた飛びぬけている。

 世界中の女性を籠絡すべく、恋文の技術を鍛え、ついには恋文のベンチャー企業を立ち上げようとあちこちに手紙を出すが、本当に出したい人にはなかなか出せない。
 本書は、そんなシャイで強がりでカッコ悪くてカッコ良い独りの男による、ピュアすぎる書簡小説である。
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 京都の大学院で研究生活を送っていた守田一郎は、手紙を通じて、恋に悩む親友の相談にのる。
 守田が手紙を書く相手は、その親友に限らない。研究室のお局的存在の女性や、見どころのある小学生男子や妹、そして作家を生業としている先輩・森見登美彦にも、守田は手紙を送りつける。

 それは文通修業であり、恋文で世界の女性を籠絡するためだと守田はうそぶくが、実は一人だけ、手紙を書けない相手がいた。

 その人こそ、守田が恋する女性であった。
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 今やすっかりメールやLINEとなり、手紙を書く機会などめっきり減った。





 だからこそ、というわけでもないかもしれないが、たまに直筆の手紙をもらうと心が弾み、また、たまに自分から手紙を書くと、不思議と心が浄化される気がする。

 そんな手紙の効用とは、いったいどこからくるものなのかと思ったが、本書を読み謎が解けた。
 守田は手紙を書きながら、愛する女性を想い、悶絶しては書き直し、そのうち自分の気持ちは本物なのかどうかにまで疑問を持ち始める。

 そう、実はそこが手紙の醍醐味なのだ。

 手紙は時間が書くのに時間がかかり、ポストに投函するまでにも時間がかかり、時には何日も費やしてしまうという、非常にまどろっこしいコミュニケーションツールだ。
 そうして時間が経つうちに、人は自分の気持ちをじっくりと見つめ、相手を想いながら「あーでもない、こーでもない」「ダメだダメだダメだ!」などと七転八倒する。
 その苦しみの過程が、手紙にはあるのだ。だから手紙はもらうと嬉しく、書くと心が清められるような気がするのだ。

 本書の守田一郎の姿は、そんな手紙の効用を100%、いや、1000%体現してくれている。
 誰かを想いながら手紙を書く、私たちの気持ちを1000%代弁してくれている。
 その姿たるや、涙が出るほど可笑しく、涙が出るほど・・・眩しく美しい。

 私の勝手な解釈だが、本書には、森見作品の原点がある気がする。
 「夜は短し歩けよ乙女」がアニメーション映画化されるが、本書を読んでから観賞すると、味わいがさらに深まるのではないかと思う。

 また、本書は森見登美彦作品が未読という方に、よりお薦め。
 宇宙に届きそうなほど飛びきりキュートで純粋な内容に、一気に森見ファンになってしまうだろう。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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