「静かな雨」宮下奈都 感想

評価:★★★★☆

 「あたしの世界にもあなたはいる。あなたの世界にもあたしがいる。でも、ふたつの世界はおなじものではないの」
(本文引用)
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 「羊と鋼の森」で本屋大賞を受賞した、宮下奈都氏のデビュー作である(「羊と鋼の森」の感想はこちら)。

 「ああ、これが宮下奈都さんの文章だ、言葉だ、テンポなんだ・・・」と、信用できる品質の水をゴクゴクと飲むように読んだ。

 そのおかげで、主人公にどっぷりと感情移入することができた。

 自分だったらどうするだろう?自分だったら、割り切れる?割り切れない?

 そんな問いかけを、自分に何度もしているうちに読み終えていた。サラッとしつつも、心にのしかかるもの、残るものの大きい物語だ。
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 主人公の行助は会社員。生まれつき足が悪く松葉杖をついている。
 行助には、好きな女性がいた。それは、たいやき屋のこよみちゃん。
 行助は、いつか下の名前で読んでみたいといった小さな恋心を抱えながら、こよみの焼くたいやきを頬張る。

 そんなある日、こよみが事故に遭う。
 一命はとりとめたものの脳へのダメージが強く、こよみは一晩寝ると記憶を失ってしまう体となる。
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 こう聞くと、障害を乗り越えて二人が結ばれる云々といった、お涙頂戴的な物語に思えるかもしれない。実際、私も最初はそう思い、激しく興ざめしてしまうのではないかとビクビクしながらページを繰った。

 しかし、それは杞憂だった。

 この物語は、二人の障害を武器や道具にしていない。確かに状況としては、いわゆる「障害のある恋愛」ということになるのかもしれないが、二人の紡ぐ愛の核は、そこにはない。

 生まれつき違う性質をもつ人間同士が惹かれあうとは、いったいどういうことなのか。そして、違う人間が共に歩むとはどういうことなのか。
 行助とこよみの日常は、それをまっすぐに問いかけるものだ。

 好きな人、大切な人と、何か価値観のズレを感じる。でも一緒にいたい。私はおかしいのだろうか?
 そんな不安定な気持ちになったら、この小説を手に取ってみてほしい。
 より自信をもって、相手も自分も愛し包み込むことができるだろう。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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