「東京會舘とわたし」辻村深月 感想

評価:★★★★★

 「帰ってきます、というその言葉通りになりましたね。――お帰りなさいませ。お待ちしておりました」
(本文引用)
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 2016年に読んだ小説で、ずばりNo.1!どうしてもっと早く読まなかったんだろう。
 
 雑誌「ダ・ヴィンチ」の「BOOK OF THE YEAR2016」でかなり上位に入っていたのだが、それも大いに納得。はっきり言って、もっと上でも良い。
 ああ、発売してすぐに読めばよかった。しかし、1年の最後にこの物語を読めて本当に良かった。気持ちよく年を越せそうだ。

 辻村深月先生、こんなに気持ちの良い涙をドバドバと流させてくれて、本当に本当にどうもありがとうございます!(この本でまた直木賞を獲ってほしいが、直木賞って二度は獲れないのだろうか?)
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 舞台は、東京・丸の内にある東京會舘。
 作家・小椋真護は、東京會舘社長と共に、東京會舘の窓から雪景色を眺める。

 そして、大正時代から続く東京會舘の歴史をたどっていく。
 関東大震災直前のクライスラーの演奏会、結婚式場が大政翼賛会の会議室となった日、太平洋戦争、それを乗り越えて一気に洋風文化が花開いた日々、大物スターのディナーショー、東日本大震災・・・。

 何度も「最後の日」を迎えながらも、一切手を抜かない心のこもったもてなしや美味しい食事は、訪れた人々に幸せな記憶を残し、人生を鮮やかに彩る。
 東京會舘は、そんな場所だった――。





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 本書は上下巻第十章から成っており、各章ごとに時代も主役も物語も変わる。
 それぞれの登場人物は、みな東京會舘に人生を支えられた者なのだが、そのエピソードは涙なしでは読めない。
 「思い出の詰まった場所があることとは、これほどまでに人生を華やかに、豊かにするものなのか」と強烈に胸を打たれる。

 なかでも良かったのが、「第八章 あの日の一夜に寄せて」だ。
 かつて東京會舘クッキングスクールで料理を学んだ女性同士が、久しぶりに東京で集まる。
 
 しかしそこで東日本大震災が発生。電車も全て止まってしまった状態のなか、彼女たちは東京會舘に向かう。
 家族の安否を気遣う彼女たちだが、そのなかで、主人公・文佳が夫の意外な素顔を明かす。

 この物語は、意外な真実が次々と明らかになるミステリー小説のような面白さもあり、また涙腺を緩ませる力も秀逸だ。
 思わずニンマリする笑いあり、文字がかすんで見えなくなるほどの涙ありで、小説を読む悦びをたっぷりと満喫できる一話だ。

 とにかく歓びの涙と幸せの涙をくれる「東京會舘とわたし」。
 優しさとは、何と人を幸せにすることか。優しさと愛情と慈しみにあふれた思い出とは、何と人生を満ち足りたものにすることか。
 そんなことを全身で知ることができる、素晴らしい小説だった。

 現実と仮想とが交錯するような構成もgood!

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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