草花たちの静かな誓い  宮本輝

評価:★★★★★

 「なぁ、きみたち、レイラのために奇跡を起こしてくれよ。レイラが元気に生きていて、優しい恋人がいて、しあわせを享受しながら楽しい日々をおくっているっていう奇跡を起こしてくれよ」
(本文引用)
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 大好きな宮本輝さんの最新刊。私にとって、宮本作品はほぼ100%面白いので、ハードカバーであろうと上下巻であろうと必ず買う。少々懐が痛もうが、それ以上に得るものがあるとわかっているのだ。

 そして今回も、「1700円+税ぐらい全く惜しくない」と、心から思わせてくれる小説だった。
 
 宮本作品にしては珍しく、ミステリー色がかなり濃厚な内容で、正直に言って最初は戸惑った。ミステリーは大好きだが、私が宮本作品に求めているものとはかけ離れているのではないかと、不安になった。

 しかし、それは杞憂だった。



 27年前の少女失踪事件を追うというサスペンスフルな物語ながら、人間の温かさや清廉さ、賢明さを力強く描く筆致はさすが!
 事件当事者たちの画策も、そこに隠された人間愛もともに非常に味わい深く、改めて長年第一線で活躍してきたベテラン作家の力量というものに、飲み込まれるように圧倒された。
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 主人公の小畑弦矢は、叔母・菊枝の突然の訃報に触れる。菊枝はロサンゼルス在住で、日本旅行の最中に急死したという。
 菊枝に家族はいない。夫は1年前に他界し、娘は6歳で病死している。そこで唯一の引き取り手として、弦矢が様々な手続きを行うこととなる。

 しかしそこで、意外な事実が明らかとなる。
 
 菊枝は、45億円超もの巨額の遺産の相続人として弦矢を指名。しかも、娘レイラが見つかった時には、遺産の7割をレイラに譲ってほしいというのだ。

 何と、病死と聞かされていた娘レイラは、27年前にスーパーマーケットのトイレに行ったまま行方不明になったのだという。
 レイラの生存可能性はほぼゼロとされるなか、弦矢は何とかしてレイラを見つけ出そうとするのだが・・・?
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 こう書くとミステリー一辺倒の物語のように思えるかもしれない。しかし、この小説を読むと、ミステリーはミステリー性があるだけではいけない、と再認識させられる。
 
 事件を取り囲む人々の人間性や暮らしぶり、日頃どんな道を通り、どんなものを食べ、どんなものを愛してきたか。
 そして、彼らを囲む自然や気候、街並みは、当事者たちをどのように育んできたか。

 そんなことまで細かく細かく描かれることで「事件」は膨らみを帯び、ミステリーやエンタテインメントだけでは収まらない「文学」にまで発展する。
 そこまで昇華されている点が、さすが宮本作品。ストーリーの面白さだけではない、心にいつまでも遺る「何か」が、読み手を満足させてくれる。

 先が気になるスリリングな展開でありながら、いつまでも解決しないでほしいような、いつまでも謎は謎のままであってほしいような・・・豊かな時間をプレゼントしてくれる物語だった。

 やはり、宮本輝の小説は、良い。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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