さらば白人国家アメリカ  町山智浩

評価:★★★★☆

 でも、今また、壁を築けとトランプたちが叫んでいる。人種や民族を超えて集まってきた人々の国に。
(本文引用)
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 連日報道される「トランプ・ショック」。
 徐々に人事も発表され、いよいよ新政権に向けて動き出したが、そのなかで政権公約が一部変化しはじめている。

 たとえば「不法入国者は全て強制送還」という公約を「不法移民1100万人のうち犯罪者ら200~300万人を強制送還の対象とする」とし、「オバマケアは全て撤退」を「一部を引き継ぐ」などとしている。

 そこで読んでみたのが、この本。

 以前のことを蒸し返すわけではないが、本書を通して、改めて「なぜトランプ氏が支持されたのか」「トランプ支持に至るまで、アメリカはどんな道をたどってきたのか」を考えてみたいと思ったのだ。



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 本書では、主にこれらの観点から「米国の迷走」をひもといていく。

 「人工中絶」「同性婚」「不法移民」「オバマケア」「銃の所持」・・・。

 なかでも「不法移民の取り締まり」については舌鋒鋭く解説。
 移民を母親にもつヒスパニック系の議員が、なぜ共和党の希望の星となったのか。 不法移民が犯罪の温床となっているというのなら、なぜ白人が減少している米国で暴力犯罪件数が減り続けているのか等、痛いところを容赦なく突いていく。

 そんなトランプ批判のなかで繰り返し登場する言葉が、「ポピュリズム」だ。
 
 トランプ氏はサイレント・マジョリティの心をがっしりとつかみ、このたびの栄光を勝ち取った。
 海外から出たことのない人がほとんどという国で、貿易や外交政策を語っても響かない。それよりも、今すぐに生活を楽にしてくれる政策を過激に打ち出す。
 
 本書を通してそんな「トランプ式」を知ってしまうと、政策の是非はさて置き当選もやむなし、と思える。
著者はトランプ氏や共和党の数々の矛盾を鋭く指摘するが、その類まれなる人心掌握術については冷静に評価する。

 とはいえ、本書が書かれた時点では、まさか本選まで当選するとは思っていなかったようだ。共和党候補に選ばれたというだけでも驚きという段階で、その裏側が細かく非常に細かく分析されている。

 ならば、本書を読む意味はないのでは?と思ってしまうかもしれないが、それは逆であろう。

 このような政策が、本選の段階に至ってもなお支持されつづけたという現実。それは、今の米国を知るうえで非常に意義のあることだと思う。

 特に、銃所持の是非については、読者である私も大いに考えさせられた。
 銃所持に批判的なオバマ大統領、銃を持つ権利を擁護しつづけるトランプ氏。身を守るために銃を持つのか、いや、銃を持たせないようにするのか。私自身は銃所持に反対だが、本書で紹介されている双方の主張はどちらも納得できるもので、判断に悩む。オバマ政権からトランプ政権に映る時に、おおいに注目したいところだ。

 トランプ大統領誕生で米国はどう変わるのか、それとも変わらないのか。過激な公約も徐々に修正されている様子で、まだ蓋を開けてみないとわからないことだらけだ。

 しかし、何がどう変わろうと、著者のこの主張だけは心に止めておきたいと思う。 

「もし、アメリカが子供たちを送還するなら、自由の女神像は撤去すべきだ」

 本書にはその理由と、その裏付けとなる「ある文言」がきっちりと記されている。
 それを読めば、この選挙がいかにショッキングなものであったかが改めてよくわかる。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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