「ナミヤ雑貨店の奇蹟」

 「地図が白紙では困って当然です。誰だって途方に暮れます。
だけど見方を変えてみてください。白紙なのだから、どんな地図だって描けます。すべてがあなた次第なのです。」
(本文引用)
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 「時の征服」・・・人々はこれを実現させることを、夢見てきた。

 H.G.ウエルズの「タイム・マシン」、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」、ドラえもん、ノストラダムスの大予言、数々の占い・・・昔から、人は「時間を征服して(自分の周りだけ)事実を思い通りに変える」ことに憧れを抱きつづけてきたように思う。
 インサイダー取引といった犯罪も、「未来を知って現在を変える」という、いわば時間を無理矢理ねじまげようとする行為といえる。

 そう、私たちは常に夢見ている。
 「未来に行くことができたら、どんなにいいだろう」
 いやそれは無理だとしても、「未来を知る人物が人生を導いてくれるとしたら、どんなにいいだろう」
 それを叶えてくれる店が、ここにある。
 「ナミヤ雑貨店」。

 これは、古びた小さな雑貨店が起こす、未来と過去をつないだ奇蹟の物語である。


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 ある夜、3人の少年が一軒の廃屋に姿を隠す。
 小さな罪を重ねてきた彼らは、今夜も空き巣狙いの窃盗をしてきた。
 そして警察の手から逃れるために、誰もいない廃墟で一夜を過ごそうとする。

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 しかし、誰も暮らしていないはずのその家に、一通の手紙が来る。
 封を開けてみると、内容は「オリンピック出場の夢か、恋人との愛か」で悩む若い女性からの相談だった。
 少年たちは、その手紙のあまりの真剣さにほだされ、回答を書いて、店の牛乳箱に入れる。
 
 そうして何度か女性と手紙のやりとりをするのだが、どうにも話題がかみ合わない。
 ケータイも知らない。インターネットも知らない。今やその2つ無しでは生きていけない少年たちは、そんな彼女に対して答に窮してしまう。


 実は、彼女は過去の人間だったのだ。いや、彼女だけではない。
 店の外は全て過去の世界。彼女が目指すオリンピックは、ロンドンでもリオでもなく、1980年のモスクワオリンピックだったのだ。
 モスクワ五輪を日本がボイコットしたことを知っている少年たちは、それを知らない彼女に向けて、知恵を振り絞って回答を書く。

 それからも少年たちには、様々な相談が舞い込む。ミュージシャンになるか家業を継ぐか、夜逃げをする家族についていくべきか、OLをやめて水商売に転職するか・・・。

 さて、未来の出来事を全て知っている少年たちは、彼らに何と回答するのか。
 そして、この超常現象の真相とは・・・?
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 いやもう、とにかく面白い。
 ファンタジーといえばファンタジーなのだが、もはやSF超大作といっても良いスケールの大きさで、「次はどうなる?次はどうなる?」と、まさに「ドキドキワクワク」という言葉がピッタリの小説だった。
 また、読んでいるだけで「時間」という果てしない海を泳いでいる気分になり、通勤電車の中でほんの数分読んでいただけでも、今、自分がどこに立っているのかわからなくなるほどであった。
 文字だけで読者をここまで異空間に引っ張り込んでしまうとは、さすが日本一の人気作家だ。

 回答者の少年たちが、どうやって悩める相談者に「時の地図」を教え導くのかが最大の見もの。
 なぜなら、あまりにも未来を明確に示しては「胡散臭い」と信じてもらえなくなるし、何より歴史が変わっては大変だ。かといって間違ったことを教えては、悩み相談の意味がない。
 その後訪れる未来がバラ色のものでも、灰色のものでも、少年たちは必死に考えて相談者たちを勇気づける。その姿が何とも頼もしく、そしていじらしい。

 そんな少年たちの様子に、読み始めた当初は「我が家の近くにもナミヤ雑貨店があればいいのに。そうすれば、指示されたとおりに生きるのに・・・」などとため息をついたが、その後の相談者たちの足取りを読んで考えが変わった。

 結局、自分の未来は自分で決めるしかないのだ。

 相談者たちは、一見、ナミヤ雑貨店に導かれているように見えて、結果的には心のままに意志を貫いて生きている。それが吉と出たか凶と出たかは読んでからのお楽しみだが、奇蹟を起こしたのはナミヤではなく、相談者たち自身であったのは確かであろう。
 その点が、単なるファンタジー小説で終わらせない現実味を与えている。だからこそ、私はこの物語にどっぷり浸かることができたのだ。
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 その店は、誰の心の中にも存在し、年中無休で営業しているに違いない。

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夢をとるか、愛をとるか。現実をとるか、理想をとるか。人情をとるか、道理をとるか。家族をとるか、将来をとるか。野望をとるか、幸せをとるか。あらゆる悩みの相談に乗る、不思議...
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Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
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