ラヴィアンローズ  村山由佳

評価:★★★★★

後悔なら、死ぬほどしている。
(本文引用)
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  陳腐な内容かもしれない。もう世間では、とうに出尽くしているストーリーかもしれない。
 なのに、まるで首筋にナイフの切っ先を突き付けられたかのように、身を固くしたまま一気に読んでしまった。

 ありふれたテーマでも、読み手をここまで強烈に引き付けるのがプロの作家というものなのか。私は改めて、作家という人の魔力を見直した。村山由佳という作家のすごさを見直した。
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 主人公の咲季子は、会社を経営する両親のもとで裕福に育つ。しかし甘やかされることはなく、自分の能力を発揮して仕事に真摯に向き合うが、それを頑として認めない人物がいた。咲季子の夫である。



 咲季子の夫は、異常なまでのしつこさと支配欲で、咲季子の行動をギリギリと縛りつけ、咲季子のプライドを砕きつづける。

 それでも何とか、美しい庭づくりだけは守りつづけた咲季子のもとに、本を出版する話が舞い込む。
 それは、以前から咲季子が憧れつづけた「女性デザイナー」との仕事だった。

 そしてそのデザイナーとの出会いは、咲季子に大きな希望と絶望をもたらすものとなる。
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 言葉の暴力で妻を言いなりにしようとするモラハラ夫の話、これもよくある。
 夫のほうが明らかにおかしいのに、マインドコントロールされ自分を責めてしまう妻、これもよくある。
 そこに新風を吹き込む人物が現れる、これもよくある。

 どの要素をとってもありふれた物語なのだが、全く飽きることなくグイグイ読めたのは、まず夫のセリフの巧みさにある。どんなに小さいことでも妻を貶めなくては気が済まない異常すぎる思考回路が、実に細かく描かれていて驚かされる。

 仕事に勤しむ妻を無能呼ばわりするだけでは飽き足らない。毛玉だらけになった夫のカーディガンを買い替えようとするだけで顔色を変えて激高し、誕生日プレゼントを贈れば「ここで喜んだらこの先も買おうとするだろ」と否定する。

 その恐ろしいほど冷血な心理の裏にあるものは、物語終盤に明かされるのだが、そんな咲季子の夫の異常性が最後の最後(最期?)まで全くスピードダウンすることなく描かれているのには、ただただ圧巻。そして、その異常性を自分のなかで飲み下そうとする咲季子の様子も、読んでいて胃がキリキリと痛くなる。

 モラルハラスメントとは、傍から見ればここまで異常なのか、いやきっと、現実のモラハラもこうなのだろう、もしかするともっとひどいのかもしれない・・・と、ドキュメンタリーを読むような思いで一心不乱に読みふけってしまった。

 そしてまた、この物語にはちょっとした変化球がある。

 咲季子の心と人生を、音を立てて大きく動かすデザイナー・堂本裕美の「人格」だ。
 堂本との出会いと行動は、咲季子の人生にとって希望となったのか絶望となったのか。 

「後悔なら、死ぬほどしている」

 のか、はたまた 

「今思い返しても、人生の宝なのだった」

 のか。

 もしこの本を読まれたら、咲季子の気持ちに、どこまでもどこまでも思いを馳せてみてほしい。
 自分が咲季子だったら、どうすべきだったのか。どうすればよかったのか。
 そんな課題と余韻を、胸の奥底まで残してくれる傑作だ。

ドラマ化希望!勝手にキャスティング。
咲季子:檀れい
道彦:前川泰之
フラワーアレンジメント教室のボス:山村紅葉
川島孝子:吉田羊
堂本:?


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プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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