通い猫アルフィーの奇跡  レイチェル・ウェルズ

評価:★★★★☆

「なあ、アルフィー、人間ってのはおかしな生き物だな」
(本文引用)
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  愛されたければ、まず愛さなくては。信じてもらいたければ、まず信じなくては。
 そんな「ギブ、ギブ、ギブ、&、テイク」の精神を、これほど教えられた小説はない。

 本書は、飼い主に死なれた一匹の猫が、寂しさや怒りでいっぱいの人に愛を与え続け、徐々に人の心を溶かしていく物語だ。
 猫がギブ&テイクの精神を知るはずなどないかもしれない。単純に、純粋無垢な動物がそこにいることで、人々が癒されている。ただそれだけのことなのかもしれない。

 しかし、この物語を読んでいると、やはり「愛してもらうためには、まず自分から存分に愛情を授けなければ」という気にさせられる。



 そして、もし怒りやいら立ちが心を支配しようとしたら、それはひとまず置いておいて、深呼吸して相手を愛することから出直してみよう。そんなことを誓ってしまった。
 サラリと読めるわりには、かなり読者に強い影響を与える小説のようだ。
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 猫のアルフィーは、ある日突然主人を亡くす。
 一人ぼっちになったアルフィーは、家族の愛情を求めて住宅街をさまよう。

 そこでアルフィーは何件かの家を訪ねるが、そこには寂しさや怒り、不安や憎悪が渦巻いていた。
 そんな人たちを見て、アルフィーは愛を受けるのではなく、与えることを考え始める。
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 この物語に登場する人間たちは、夫に捨てられた女性、仕事が見つからず世をすねる男性、育児ノイローゼの女性等、みな心に冷たい風が吹きつけている者ばかりだ。
 アルフィーは、もうこれ以上冷たい風が心をつんざくことのないよう、彼らの家に通い続けるが、その健気さ、いじらしさがたまらない。
 そしてそんなアルフィーの気持ちに、凍てついていた人間たちの心が溶かされていく過程は非常に読み応えがある。

 アルフィーの愛情表現は、プレゼントのつもりでネズミや鳥の死骸を玄関マットに置くなど人間からすれば頓珍漢なところも存分にある。しかし、それがどんなに気持ちの悪いものでも、そこにある「打算のない愛」だけはしっかりと彼らにも読者にも伝わっていく。
 ああ、これほど純粋な愛のコミュニケーションがこの世にあるだろうか! えらいぞ、すごいぞ、アルフィー! 読みながら、何度もそう叫びたくなった。

 さらにこの物語の素晴らしい点は、「問題ある人間たち」の心境が、決して特殊ではないことだ。仕事もあって伴侶もいる幸せな生活を送っていても、彼らの心情や行動を読んでいると「ああ、確かにこういう寂しさってあるなあ」とスーッと共感してしまう。

 それはきっと、心理描写が非常に丁寧になされているからだろうが、それだけにアルフィーとの心のやり取りが胸を打つ。
 今、わが家にアルフィーが来たら、心の中が喜びで満たされ、何かがものすごく良い方向に変わるのではないか・・・そんな気すらしてくるのだ。

 気がつけば、つい愛情をもらうことばかりを考えそうになるが、アルフィーの姿を見て、「やっぱりそれじゃいけないな」と心から反省した。
 家族愛も恋愛も、どんな愛も、やっぱり「ギブ、ギブ、ギブ、&、テイク」。
 そうすれば、きっとうまくいく。今が寂しくても、きっと奇跡は起こるのだ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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