代償  伊岡瞬

評価:★★★★★

「いつか、好き勝手をしてきた代償を払うときが来る。」
(本文引用)
______________________________

  「反吐が出る」とは、こういう本に出合った時の感情を言うのだろう。いや、正確に言うと、この本に登場するような人間に出合った時、か。

 そして不思議なことに、「反吐が出る」ような小説ほど逃げたいのに逃げられない。目を背けても背けても、顔をつかまれてグイッとページに引き戻される。そして、最後の1文字まで読まずにいられない。

 これが「反吐が出る」ような人間だったら、きっと人生を完膚なきまでに破壊されるのだろう。
_________________

 主人公の奥山圭輔は、小学4年生。優しい両親と共に幸せに暮らしていたが、遠縁の母子、道子と達也と関わるうちに、その生活が静かに壊されていく。



 そしてある日、決定的な悲劇が起こる。圭輔宅で達也を預かっていた夜、火災が発生。圭輔は達也に手を引かれて逃げ出したが、圭輔の両親は共に死亡するのだ。

 その後圭輔は、達也に「火災の夜」を餌にしつこく脅されつづける。
_________________

 恐ろしく狡猾に、他人の人生をコントロールしようとするキャラクターは、様々な小説で時折描かれる。そして実際に、そのような人間に一家全員殺されるといった事件が時々起き、世の中を震撼させる。
 この小説に登場する「達也」という人物も、そんな生まれながらの悪党なのだが、達也の気味悪さと凶悪さは群を抜く。読みながら、何度胃液がこみあげたことか。
 何の恨みもない相手の人生をゆっくりと蝕み、そしてXデーが訪れると、決して自分の手を汚すことなく粉々に打ち砕く。

 そんな達也の人生と、達也に翻弄される圭輔の人生とを、少年時代と成年時代との二部構成で描くのだが、その「年月の長さ」がまた達也の悪質さを如実に表している。

 ・・・とまあ、これだけ気持ち悪い、気持ち悪いというのなら読むのをやめればよいのだが、これがまた怖いもの見たさなのか「達也」という人間の恐ろしさなのか、やめられないのである。
 長年にわたる、達也親子の綿密な計画と悪行三昧、全身全霊をかけてそれと戦う圭輔の執念。
 食うか食われるかの争いに、いったいどんな決着が待ち受けるのか。達也の特異すぎるキャラクター故それが全く想像できなかったこともあり、私はページをめくる手をやめることができなかった。

 もともとグロテスクな小説が好きな方はもちろん、そういうものは苦手だけれど、とにかく夜を徹して夢中になれるような小説を読みたいとお考えの方には、非常にお薦め。
 達也という毒を一口でもふくんだが最後、最後の一滴まで飲み干したくなること間違いなしである。

詳細情報・ご購入はこちら↓

関連記事
プロフィール

アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

最新記事
シンプルアーカイブ
最新コメント
最新トラックバック
RSSリンクの表示
QRコード
QR

書評・レビュー ブログランキングへ
にほんブログ村 本ブログへ
にほんブログ村
カテゴリ
広告
記事更新情報
リンク
広告