ル・コルビュジエを見る ~20世紀最高の建築家、創造の軌跡~  越後島研一 

評価:★★★★★

彼の創作能力の高さとは、こうした「後から振り返ればきわめてまともな」課題が、具体的に見えた点にあった。
(本文引用)
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  上野の国立西洋美術館を含む「ル・コルビュジエの建築作品」が、いよいよ世界遺産に登録されることが決まった。
 
 これは国立西洋美術館が世界遺産に登録されるというよりも、ル・コルビュジエの作品が登録されるということなので、複数の国、大陸にまたがる世界遺産となる。
 それだけで、ル・コルビュジエという建築家がいかに偉大かがわかるが、ル・コルビュジエとはどんな建築家なのか。純粋にそれを知りたいと思い、本書を手に取ってみた。

 そこで驚いたのは、作風がガラリと変化してもなお偉大だったという事実だ。

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 ル・コルビュジエは建築家であり画家であり彫刻家で、さらに詩集等の著作も発表しているという。
 本書ではそういった点にも存分に踏み込み、ル・コルビュジエの素描や、ササッと描いた自邸のデザイン等も紹介しながら、コルビュジエ氏の創作の原点や魅力に迫っていく。

 後に多大な影響を与えた「白い箱型」の建築、オフィス街でよく見かけるガラス張りのビルの原点ともなったドミノ形式の建築、箱型からの変貌、曲線との共鳴・・・。

 そして最終章では、ル・コルビュジエに影響を受けた日本人建築家の仕事について詳しく触れられている。

 この本を読んでいると、「建築とは人のいる空間を包むものである」ということに改めて気づく。

 どんなに美観が優れたものでも、その国の気候によっては雨漏り等を起こし、人のいる空間ではなくなってしまう。
 また、人の動線に合わないものも、建築としては成り立たない。

 ル・コルビュジエ氏の建築のすごさは、新しさの中にも、「人のいる空間を包む」ことを揺るがせにしないことであり、そのためには作風の変化も世間の既成概念も壊すことをいとわないところなのだろう。

 たとえば、上野の国立西洋美術館は「無限成長美術館」というアイデアで完成したものだ。
 美術館では、当然ながら収蔵品がどんどん増えていく。そこでコルビュジエ氏は、それを見越して、展示室が渦巻き状に続くように設計する。
 本書および朝日小学生新聞(2016/07/20)の記事によると、国立西洋美術館が小規模だったために増築は実現できなかったらしい。しかし、コルビュジエ氏の建築が、かなり機能面重視であるという点に感動した。
 いや、建築家の方は皆、機能面を重視されていることとは思うが、私は「世界遺産=デザインの斬新さ」のような印象を勝手に持っていたため、妙に胸がジーンと来てしまったのだ。

 さらに面白いのが、南仏マルセーユにできた集合住宅だ。普通、集合住宅は南側に部屋がズラッと並び、北側は共用廊下のみとなる。
 しかし、コルビュジエはある考えを持って、部屋を東向きと西向きにするのだ。
 この発想は、「人のいる空間を包む」という信念を第一とし、さらにそれを戦後復興と人口増加という社会背景に照らしてまとめあげたものだ。
 このエピソードからは、コルビュジエ氏が「人・街・時代」すべてを考えながら、社会に喜ばれる建築をしたことがうかがえる。

 本書を読んでから国立西洋美術館に行くと、かなり見方が変わるに違いない。
 展示物よりも、今、歩いている床の傾斜1つひとつをかみしめながら館内をさまようことになるだろう。
 この機会に国立西洋美術館に行かれる方には、ぜひ一読をお薦めする。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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