赤毛のアンナ  真保裕一

評価:★★★★☆

 「今まで頑張ってきたつもりだけど・・・・・・アン・シャーリーになれなかったよ、あたし・・・・・・」
(本文引用)
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 いきなり「赤毛のアンナ」などというタイトルを見せられたら、てっきり「赤毛のアン」のパロディのコメディ小説と思ってしまうかもしれない。

 しかし、著者が真保裕一氏なので、そんなことはないだろうと思い読んでみた。
 真保作品は、いつも人の心の底にある悲しみを優しくすくいとるような、慈しみと誠実さにあふれた小説だからだ。

 そしてこの小説も同様だった。
 もし、自分が人には到底いえない過去を持っていたらどうするか。もし、愛する人の過去が気になって仕方なくなったらどうするか。
 この小説は、「今現在の自分」と「今、眼の前にいる大切な人」を信じることの難しさを伝えている。と同時に、それを信じることができる人が、いかに強いかということも。



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 主人公のアンナ-志場崎安那(しばさき・あんな)は母一人子一人だったが、母親が車ごと川に落ちるという事故で死亡し、以来施設で育つ。
 アンナは、同じ孤児である「赤毛のアン」のアン・シャーリーにひたすら憧れ、施設でも学校でも職場でも快活に過ごす。優しく頭が良く物怖じしないアンナは、どこでも人気者だった。
 
 しかしある日、アンナは傷害事件を起こし勾留されてしまう。
 それを知ったアンナの同級生たちは驚き、身寄りのいないアンナを助けようと動き出す。

 そして彼等は、その事件の真相を知るうちに、自分の過去とも向き合わざるをえなくなる。
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 読んでいる途中は、正直ややリアリティに欠けている印象をもった。
 いくら友達だったからといって、報道で事件を知っただけで、ここまで同級生が集結して被疑者を助けようとするだろうか。また、こんなに易々と弁護士が協力してくれたり、過去の知人が快く面会に応じてくれたりするものだろうか、と。

 しかし読んでいるうちに、そんなリアリティはどうでもよくなってきた。
 本書の強烈なメッセージの前では、現実味や臨場感など二の次三の次なのだ。

 この物語の大きなテーマは「隠したい過去」だ。
 事件の真相解明に向け、同級生や施設の先生らは「施設を出てから事件を起こすまでのアンナの過去」をつぶさに追っていくが、それだけで留まらないのが本書の面白いところ。
 事件を追いながら、同級生やアンナの恋人、果ては恋人だった男性の配偶者の「隠したい過去」まで次々と明かされていくのである。

 彼らは恵まれた家庭に育ち、確かな社会的地位も築いており、一見、「隠したい過去」などないように見える。
 しかし、そんな彼らにも、目を覆い耳を塞ぎたくなるような過去がある。そこまで言及されている点が、この小説の大いなる魅力である。読みながら、「そういえば私も・・・」と登場人物たちに自分を重ねてしまう読者も多いであろう。

 そして、それを興味や悪意で掘り返し、現在一生懸命生きている人に突き付けることがどれだけ愚かしい行為かが、本書からは熱く伝わってくる。
 大切な人、愛する人、ただの知り合い・・・彼らの過去を知りたいと思ってしまうのは普通の感情であろう。
 しかし、それにとらわれると大きなものを失う。「今、目の前にいる人」を「今、自分の目で見ること」が何よりも大事なのだ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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