マチネの終わりに  平野啓一郎

評価:★★★★★

 自分はやがて、極自然に彼女を愛さなくなるだろうか。
(本文引用)
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 昨年、「恋とはどんなものかしら」というドラマがヒットした。もしも、この小説を読んでいる時にそう問われたら、私はこう答えるだろう。「恋とは、人を罪人にする」と。

 人は恋をすると、どうしてこう色々と間違えてしまうのか。この物語の登場人物の言葉、行動、胸の内のつぶやき、それら1つひとつをなぞりながら、私はそんなことを考えた。

 そして、こんな思いが心をよぎった。
 いっそ、「恋」という感情などなくなってしまえばよいのに――。

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 クラシック・ギタリスト蒔野聡史は、自分のコンサートの終演後、一人の女性を紹介される。蒔野は、その女性、小峰洋子にたちまち惹かれる。



 通信社の記者である洋子は、仕事がら危険な地域に赴くことがあり、実際に命の危険にもさらされる。
 蒔野は、そんな洋子の身を案じながら、ますます洋子への思いを強くしていくが、洋子には婚約者がいた。

 二人は口に出せない思いを抱えながら、次第に距離を縮めていくが・・・。
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 本作品は毎日新聞で連載されていたそうだが、この時ほど「毎日新聞をとっていればよかった」と悔やんだことはない。

 蒔野と洋子の恋の行方はどうなるのか、そして、洋子の婚約者や蒔野マネージャー等周囲の人物がどう絡んでくるのか。こうして一冊の本で読むだけでもドキドキするのだから、連載で読んでいた人は、さぞかし明日が待ち遠しかったことだろう。
 連載終了後「マチネロス」になった読者が多数いたそうだが、それも納得だ。

 特に、蒔野に思いを寄せる女性マネージャー・三谷の動きからは目が離せない。
 彼女の“ある行動”のせいで、この小説の恋模様がガラリと変わってくるのだが、それが何ともミステリーチックで面白い。
 そこで起こる行き違いや勘違いは、(例えが適切かどうかはわからないが)何だかアンジャッシュのコントを観ているようで、思わずニヤリとしてしまった。こんなスパイスが隠されているのも、「マチネロス」を生んだ所以であろう。

 冒頭で書いたように、読んでいる間はずっと「恋とは、人に過ちを犯させる、とんでもない麻薬だな」と感じていた。「恋」という感情に対して、怒りすら覚えたほどだ。

 しかし読後感は予想外に爽やかで、そんな憤りなどどこかに飛んで行ってしまった。
 読み終えた今、「恋とはどんなものかしら」と聞かれたら、私はこう答えるだろう。
 恋とは、どの感情よりも素晴らしいものだ、と。

 平野啓一郎の最新刊「マチネの終わりに」。
 極上の恋愛小説とは、この物語のように、恋に懲りた人も恋をしたい人も共に楽しめるものを指すのだろう。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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