老後の資金がありません  垣谷美雨

評価:★★★★★

 お金を使うのはなんと難しいことだろう。
(本文引用)
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  もう最高っっ! どうして、こんなに胸のすくような小説を書けるのか。著者の頭の中を見てみたい!
 垣谷美雨の小説は、一気読み必至の面白さということはわかっている。わかってはいるのだが、ここまで愉快痛快だとは思わなかった。

 老後の不安を抱える人たちを臨場感たっぷりに描き、読者の不安をさんざんかきたて「何かもうさっさと死んじゃいたい」と思わせながらも、言葉の端々に現れるハイセンスすぎるギャグで、最終的には「やっぱり生きてるっていいよね」と思わせる。

 これは、ちょっとやそっとじゃできない達人技。垣谷美雨作品のストーリー展開は、もはや芸術の域といえるものなのだ。


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 主人公の後藤篤子は、悩んでいた。それは、娘のさやかが豪華な結婚式を挙げることになりそうだからだ。
 篤子は老後のことを考え、常に節約に努め貯金をしてきた。それがたった1日の出来事で数百万円吹っ飛んでしまう。
 それだけでも頭が痛いのに、舅が亡くなり、葬儀費用ものしかかることに。
 
 どんどん目減りしていく貯金、それでも続く姑への仕送り、パート先や夫の会社の経営危機・・・。
 
 篤子は老後の生活が不安でたまらなくなるが、姑と一緒に、思わぬ臨時収入を得ることとなる。
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 垣谷美雨作品の魅力のひとつは、「あるある」度の高さだ。
 登場人物たちの会話や行動が、いちいち「あるある!」と手を叩きたくなるもので、そのリアリティは、お笑い芸人の「あるある」芸など瞬殺する。

 たとえば、姑の住まいについて篤子が義妹と言い争う場面では、こんなセリフが。
 出費がかさむために、姑の豪華ケアマンションを解約してほしいと懇願する篤子に対し、義妹は「公立の特養に入るには入居待ちが何万人もいる」と反論する。
 それに対する篤子の言葉は、こうだ。 

 「それは知っています。『クローズアップ現代』で特集してましたから」


 さらに、富裕層と庶民との間では、古くなったブラウスの扱いが違うことにも言及。
 富裕層は高価なブラウスをリメイクして長年着続け、庶民は着尽くした後は換気扇を拭いて捨てる。
 こんな細かな「あるある」が随所随所に散りばめられており、読んでいて本当に飽きない。
 
 そして、垣谷美雨作品のもうひとつの大きな魅力は、日常生活を描きながらもサスペンスチックな点である。
 娘のさやかのDV被害疑惑、姑の意外すぎる側面、友人家族の裏事情・・・。
 全体的にこのうえなく現実的な物語なのに、日常に潜むミステリーがたっぷりと盛り込まれており、これがまた読者の心を離さない。
 
 この「こんなことあるある」と「こんなことあるわけない」の絶妙すぎるバランスが、この小説の見事さだ。「ニュータウンは黄昏れて」といい「あなたの人生、片づけます」といい、垣谷作品については、もう誉める言葉が見つからない。ただただ「大好き!」としか言いようがない。

 老後の生活が心配な方、思わぬ出費に頭を悩ませている方、そして、とにかく笑って泣いて笑いたい方。
 そんな方に心からお薦めしたい、最高かつ最強のコメディ小説である。
 
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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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