バラカ  桐野夏生

評価:★★★★☆

この穏やかな暮らしはいつまで続くのだろう。いや、続けなければならない。(本文引用)
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 面白い小説を読んだ時は、いつも「ドラマ化してほしい!」と思ってしまうのだが、これはぜひ映画化していただきたい。
 カワシマ役はウーマンラッシュアワーの村本さん、優子役は木村佳乃さん、田野崎理恵役は黒木瞳さん・・・。読後、そんなことを考えながら毎日ニヤニヤしている。いや、もしかするとハリウッドあたりが、先に映画化に乗り出すかもしれない。

 天変地異により、「穏やかな日常」というものが根底から破壊された世界。
 いたいけな子どもが毎日売られていく、そもそも穏やかさなどとは縁のない世界。

 そのような状況のなかで、人間を支えるものは何なのか。人は何があれば生きていけて、何を失うと生きていけないのか。



 650ページほぼ全て絶望という、ひたすらダークな本書は、我々にそんな課題を突き付ける。最後の最後に人間に残るものとは、いったい何なのか。
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 舞台は、未曽有の震災により大きな痛手を受けた東日本。原発4基が爆発し、東北から関東地方の多くが放射能に侵される。
 そこで動物を助けるボランティアをしていた老人・豊田は、1人の幼女を発見する。彼女は何を聞いても「バラカ」としか話さなかった。
 
 お腹を空かせた犬たちに囲まれて1人ぽつんと座り込む少女は、いったいどこから来たのか。
 そこには、見栄と欲に支配された、暴力的で無計画な大人たちの姿があった。
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 帯に「私の『震災履歴』は、この小説と共にありました」という著者の言葉が載せられているため、もっと東日本大震災に特化した内容かと思ったが、意外とそうでもなかった。
 しかし、多くのものを失った時に、人間を満たすものとは何かを考えさせるという意味で、本書そのものが「日本人にとっての震災履歴」となるだろう。
 
 この小説には、悪意が渦巻いている。怨念、害意、意地、賊心・・・そんな心に骨の髄まで侵され、欲のままに突っ走る大人たちの姿は、読むだけで臓物をひっくり返されるほど不気味で腹立たしい。
 
 そんな彼らはお金にも食べ物にも困らないが、何かが決定的に欠けている。そしてその欠けたものこそが、人間にとってなくてはならないもの。どんなにライフラインが整っていても、生活が裕福でも、それが欠落していては人は生きていけないのだ。

 大人たちの悪意に翻弄された少女バラカは、その「人間にとって不可欠なもの」をどうやってつかみ取っていくか。
 世界を舞台にして逃げつづけ、走りつづけ、求めつづけるバラカの足跡は、読み手にとって人生の道標となるだろう。
 周囲が死と化した時、私たちはどう生きるべきか。全てを失いそうになっても、最後まで決して失ってはいけないものとは何か。バラカの生き方は、それを教えてくれる。

 世界を舞台にした大長編ロマン「バラカ」。
 設定のスケールの大きさは読んでのとおりだが、読者の心に残すものは、もっと大きい。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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