願いながら、祈りながら  乾ルカ

評価:★★★★★

「『いつか』を考えられるのは、とても幸せだというのを、けっして忘れてはいけないよ」(本文引用)
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 物語にどんどん引きこまれて一日で読んだが、それは読みやすいからだけではない。
 登場する少年少女や大人たちのことをもっと知りたい、彼らのことをもっと知って、そのうえで彼らの幸せを願いたい。そう思うと、寸暇を惜しんで読まずにはいられなかったのだ。

 そして読みながら、自分の中である認識がガラリと変わっていくのを感じるのが、楽しくて仕方がなかった。「悩み」のあることが幸せなんて、今まで考えたこともなかったのだから。
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 舞台は北海道の中学校。生徒総数は5人という小さな分校である。
 そこに教師として赴任した林は、すぐにでも辞めるつもりで嫌々生徒たちと向き合う。



 しかし林はある日、村に住む医師にこう言われる。
 人生のうちの20分を、5人の子どもたちのために使ってほしいと・・・。

 林は気持ちを入れ直し、改めて生徒たちと対峙する。するとそこには、それまで想像もつかなかった子どもたちの複雑な思いがうごめいていた。
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 子どもたちが抱える悩みは、様々だ。
 面識もない本校の子との修学旅行、分校ということで感じる学習面のハンデ・・・。その他、特別な人間になれない悔しさや、進路選択が迫るにつれて友人との距離が離れていく寂しさなど、小さな村ならでは、また青少年ならではの繊細で深刻な悩みを、子どもたちは持っている。
 
 しかし、彼らの悩みにはある共通点がある。それは、未来があるという点だ。
 「いつか」この村から飛び出し、「いつか」将来の夢を叶え、「いつか」特別な自分になれる。
 悩みがあるということは、すなわちそれを解消できる未来があることであり、このうえなく幸せなことなのだ。
 
 それに気づかせる役割を果たすのが、中一の亮介だ。亮介は、いつもちょっとした嘘をつく癖があるのだが、彼の嘘にはひとつの大きな真実があった。
 それが、「いつか」と言える悩みがあることはこの上なく幸せであるということなのだが、「悩み」にそんな美点があるとは、本書を読むまで全く気がつかなかった。これは大きな収穫であり、これからの人生においても非常に価値のあることだろう。

 私がこの本に費やした時間は、人生のなかの1秒にも満たないかもしれない。しかし、本書が私に費やしてくれた時間は永遠である。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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