荒地の恋  ねじめ正一

評価:★★★★★

そう、俺は君を生きなかった。だから罰は惨い方がいい。
(本文引用)
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 作中に「キ○ガイ」という言葉が出てくるように、はっきり言って滅茶苦茶な人たちの物語である。身勝手で、欲に溺れて体を壊し、他人の迷惑も顧みず、都合の良い時だけ常識人ぶる。そんな人間たちのドラマなのに、深く深くドボドボと惹きこまれ、一日で読んでしまった。
 久しぶりに、人間の尋常ならざる葛藤というか悶絶というか、究極の「罪と罰」というものを見た気がする。
 読みながら、思わず「小説って、こういうものだよなぁ」などと、熱いため息をホゥッともらしてしまった。
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 主人公・北村太郎は、新聞社に勤めながら詩人・翻訳家としても活躍する50代半ばの男性だ。妻と2人の子供がいるが、前妻と子供を海の事故で亡くすという悲しい過去をもっている。



 そんな太郎が、一人の女性と恋に落ちる。彼女の名は前妻と同じ<明子>。明子は旧友の妻であり、いわばW不倫となるが、二人は住まいを借りて新生活を始める。

 明子との恋愛により、詩人・北村太郎は息を吹き返したように創作に力を入れるが、エキセントリックな明子との道ならぬ恋は太郎の人生を激しく翻弄し、静かに壊していった。
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 太郎と明子の不倫、そして明子の夫・田村隆一の酒と女の日々、誰にも知らされなかった亡友の結婚など、どのページを開いても火傷しそうな小説だ。
 にも関わらず、下品さが全く感じられないのは、登場人物の誰もが「越えてはいけない一線」を越えてないからだろう。
 
 確かに、男女の関係という意味では一線を越えてしまっている。しかし、人間としてこれだけは守らなければならない義理や優しさというものを、皆、最後の最後まで手放さずに持っている。だからここまで強烈なエピソードが並べ立てられても、全く嫌な感じがしない。読めば読むほど心が満たされ、人を愛したくなってくる。

 特に後半、明子の精神状態がいよいよ危うくなってからの、太郎の行動がいい。
 ネタバレになってしまうので詳細は省くが、恨みに恨んで完全に見放してもおかしくない状況になっても、人はここまで優しくなれるのかと心を揺さぶられた。いや、揺さぶられたどころではない。グッときた、ガツンときた・・・でも、まだ足りないかも。

 2016年1月からWOWOWで連続ドラマとして放送されるが、太郎役が豊川悦司さんというのが、もうジャストミートすぎる。豊川さんの当たり役となるのではないか。
 最所フミ(ドラマでは最上フミ)役がりりィさんというのも、「よく、やってくれた!」と制作者に握手を求めたくなるほどナイスなキャスティング。
 放送開始が、非常に楽しみである。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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