呪文 星野智幸

評価:★★★★★

「だって、みんな誰かを殺したくて仕方なかったんだもん、ずっと前から」
(本文引用)
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 何年かに一度、一族郎党殺される(殺し合う)といった事件が起こる。
 そういう事件を聞くたびに、「なぜそんなことが・・・?」と首を傾げてしまうのだが、この小説を読み、そのメカニズムがわかってきた。人間って、こうして操作されてしまうのだな、と。
 じゃあ、これを読んでおけばマインドコントロールを防ぐことができるのかというと、自信がない。
 敵が、この物語に出てくるような人物だとしたら、どんなに「私は引っかからない」と気張っていても十中八九コロリと操られてしまうだろう。
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 主人公の霧生は、商店街でメキシカンサンドイッチを売っている。しかし経営は思わしくない。そもそも、商店街そのものが廃れてしまっており、夜逃げをした店もあるほどだ。



 ある日、商店街の居酒屋に一人の客が現れる。実はその客はクレーマーで、店で少しでも気に入らないことがあると、ネットを使って徹底的に店をけなすことで有名な男だった。
 例によって、男はネットでその居酒屋を名指しで罵倒し、商店街全体を潰しにかかる。
 そこで居酒屋の主人・図領は、男の暴力に冷静に反撃することで世間を味方につけ、商店街の改革に立ち上がる。

 しかし、その盛り上がりに対し、霧生は違和感を抱く。
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 読み始めた当初は、ネット社会の弊害や、SNSによる承認欲求に警鐘を鳴らす内容かと思ったが、良い意味で裏切られた。
 ネット云々は関係なく、人心掌握をする側・される側の心理状態が恐ろしいほどに伝わってきて、ページをめくる手が止まらなかった。・・・この小説にこんな言葉は不謹慎なのかもしれないが、やはり一言、いわせてもらおう。「すっごく面白かった」と。

 なかでも圧巻なのは、図領たちのやり方に疑問を持っていた霧生までもが、巧みに洗脳されていく場面だ。
 世間が「正義」に酔いしれている中で、必死に正気を保っていた人間ですらもここまで操られるとは・・・。今、この瞬間にも誰かが世の中に「呪文」をかけつづけ、自分はそれに気づかないまま踊らされているのではないかと、思わず周囲を見回してしまった。

 霧生の精神状態は、ラストに意外な形で落ち着くが、商店街の人々の洗脳はどこまでエスカレートしていくか。
 本書を読み終えた今、その行く末が気になって仕方がない。あとは読者自身で考えるべきなのかもしれないが、著者なりの「図領たちのその後」と「商店街の新しい歴史」をぜひ読んでみたい。心から続編を希望する。

※ぜひ映像化してほしい!というわけで、勝手にキャスティング。

霧生:向井理
湯北:クリス松村
図領:星野源
栗木田:小宮浩信(三四郎)
佐熊:パパイヤ鈴木
咲紀:沢尻エリカ


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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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