屋上のウインドノーツ  額賀澪

「人って、いっつもいっつも自分より弱い人を見つけて、その人を笑ったりいじめたり、助けてあげたりして、自分がその人より高いところにいるって確認して安心してるのかなって」
(本文引用)
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 「『自分はダメ』高校生7割」

 週末の朝、日本経済新聞(2015/8/29)をのんびりと眺めていたら、こんなタイトルが目に飛び込んできた。
 記事によると、「『自分はダメな人間だ』と思うことがある」という日本の高校生は7割を超え、アメリカ・中国・韓国と比べて突出して高いとのこと(国立青少年教育振興機構調べ)。
 逆もまた然りで、「自分には人並みの能力がある」と答えた生徒の割合は、他国と比べて相当低いことがわかった(米国・中国は9割、日本は5割強)。

 う~ん・・・もうこうなったら、この小説を薦めるしかない。
 本書は、「自分はダメだ」と思い続ける女子高生の成長物語。かと言って、ポジティブシンキングや自己肯定感をひたすら主張するものではない。それどころか、自己否定の経験を歓迎しているとすら思える。



 もし現在、「自分はダメな人間だ」と思っているのなら、この物語と共にとことん自己否定を追求してみてはいかがだろうか。
 自己否定感のある人にしか、決して見つけられない希望と幸福が、必ず見つけられるだろう。
 そして気がつけば、常に自信に満ち溢れている人に引け目を感じてしまったり、逃げ出したくなったりする気持ちが雲散霧消していることだろう。
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 主人公の給前志音は、人付き合いが苦手な女の子。唯一の友だちは、幼稚園で声をかけてくれた瑠璃だ。
 華やかで頭が良く優しい瑠璃は、いつも志音を気遣い話題に引き入れようとするが、瑠璃の取り巻き女子はそれにうんざり。志音はそれに気づきながらも、瑠璃がいないと完全に一人になってしまうため、瑠璃を頼りに中学時代までを過ごす。

 そんな志音に転機が訪れる。

 あえて瑠璃と別々の高校に進学した志音は、吹奏楽部のドラマーとしてスカウトされるのだ。
 ドラマーを探していた部長・大志が、学校の片隅で静かにドラムを叩く志音を発見し、熱烈に入部のラブコールを送る。
 しかし志音は、かたくなにそれを拒み続ける。
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 登場人物たちの感情の渦にすっかりのみこまれ、夢中で一気に読んだ。自分でも驚くほど感情移入して読んでしまったが、その理由はおそらく、誰一人として前向きな人物がいないからであろう。
 たとえば部長の大志は、皆に慕われ、初対面の人の心にもスッと入り込むことができる人気者タイプだ。おそらく、顔良し頭良し性格良しの三拍子がそろっていると思われる(映像化されたら、さしずめ配役は福士蒼汰君といったところか)。
 しかし、そんな大志は心に大きな傷を抱えており、何事にも臆病になっていた。

 大志だけではない、あの自信たっぷりな子も、意地悪な子も、一度も人生につまずいたことがなさそうなあの人も皆、どこかビクビクしながら自己否定感や嫌悪感を持って生きている。
 
 それにも関わらず、物語の展開は実に爽快だ。
 無理やり自己肯定感を持つのではなく、自己を否定しウジウジと悩む自分ととことん向き合い、そんな「ダメな自分」がやれることを這いずりながらも一つ一つ積み上げ、大きな花を咲かせる。
 そこに物語のリアリティがあり、おおいに共感できた。ヒーローもヒロインもいなくても、誰もが後ろ向きで欠点だらけでも、これほど痛快な物語が書けるものなのだなあと、読後思わず拍手をしてしまった。

 人間関係につまずいている人、「自分はダメだ」と落ち込んでいる人を決して責めることなく、そのままの姿で人生を謳歌する術を教えてくれる小説「屋上のウインドノーツ」
 自分が、冒頭の調査の「7割」に当たっていると感じていたら、ぜひ読んでみていただきたい(残り「3割」の前向きな方も)。

読むときは、こちらの動画と併せてどうぞ↓


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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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