この世界が消えたあとの 科学文明のつくりかた   ルイス・ダートネル

科学は世界の仕組みを理解するための、これほど有益な体系となっている。知識を生み出す、強力なマシンなのだ。そして、だからこそ科学的手法そのものが、あらゆるもののなかで最大の発明なのである。
(本文引用)
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 以前、こんなクイズを聞いたことがある。

 「荒廃した世界のなか、人類最後の男が家にいたところ、ドアをノックする音が聞こえた。ドアをノックするのは誰だ?(小沢健二風)」。

 正解は、「女性」。
 家にいたのは「人類最後の男」であり、女性はまだ存在していた、というわけである。

 こんな問題を聞くと、誰もがこう思うのではないだろうか。
 「もしそうなった場合、この男性と女性とで、また新たに世界を作ることができるのだろうか?できるとしたら、必要な人数と年数はどれくらいになるのだろうか?」と。



 そんな疑問に答えてくれるのが、この本。
 この世界が何らかの理由で大破局を起こし、人口が激減したら、どうやって再起動をさせればよいか。
 本書では、それをうんと徹底的に追求していく。ある意味、“究極の災害対策マニュアル”である。
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 この本は、まず人口回復に必要な最少人数を割り出すところから始まる。
 つまり、地球が壊滅的な被害を受けたときに、「最低何人が生き残っていれば世界を元通りにできるのか」ということである。それについて、著者は遺伝子レベルの見地から算出する。
 そして、避難場所や確保すべき物資について言及し、文明再起動への道筋を順序立てて説明していく。
 それはそのまま人類の歴史であり、発明や革命の歴史を歴史年表通りになぞっているようであるが、そこが違うところが、本書の面白さだ。
 何しろ、「現在の世界が崩壊した後での再起動」だ。最初から何もない世界からの起動とは、わけが違う。

 なかでも、「火を起こす場所の選定」などが良い例だ。
 大破局が起きた後、人類の生存を確実にするのは、まず「火」である。
 そこで著者は、マッチもライターもない場合の火の起こし方をバリエーション豊富に解説し、さらに「近年建設された建物がある状況下、どこで火を焚くか」を深く考察する。
 人類が初めて火を使い出した時ならば、気候や風向きなどは考えても、建物の構造まで配慮する必要はなかったであろう。
 このように、いわゆる原始時代でなく、あくまで「現代」を想定して文明の誕生を説いていく点が、本書の大きな特徴であり大きな魅力である。

 さらに面白いことに本書では、過去、実際に大破局ギリギリの憂き目に遭った国や地域を採りあげ、再起動の軌跡を追っていく。
 特に印象的なのが、ボスニア・ヘルツェゴビナの都市ゴラジュデの例だ。
 ゴラジュデ市はボスニア紛争の最中、セルビア人武装勢力によって電力の供給を止められる等インフラの大半を失った。
 その期間は3年にも及んだが、その間、ゴラジュデ市民は急ごしらえで水力発電装置を建設する。

 その他、ペストによる大量死がもたらした社会への意外な効用には、驚きと共に妙に納得。今さらではあるが、文明というものは、人間が「次はああしよう、こうしよう」と計画して出来るものではないのだろう。
 想定外の事態に直面し、その必要に応じて、わりと行き当たりばったりの急ごしらえで、文明というものは出来上がっていく。それがさんざん熟成した形が今の世界なのだと、本書を読み再認識させられた。

 まぁ難しい話は抜きにして、災害時のサバイバル術が細かく書かれている実用的な本なので、一家に一冊持っておくことをお薦めする。
 いや、遭難等をした時のために、1人1冊持っておいても決して損はないだろう。
 理科や社会科が苦手という方も、ぜひどうぞ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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