全盲の僕が弁護士になった理由  大胡田誠

 「だから無理だ」と逃げるよりも「じゃあどうするか」と考えるほうが、人生はがぜん面白くなる。
(本文引用)
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 読みながら、何度も涙で顔がグシャグシャになった。

 もっと早く、この本に出合いたかった。もっと早く、大胡田氏の言葉に触れたかった。
 2012年3月に出版されたとのことで、私は3年以上本書の存在を知らなかったわけだが、今、その3年を取り戻したい気持ちでいっぱいだ。
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 著者・大胡田誠氏は、先天性緑内障により12歳で光を失う。最後に見た風景は、小学校の修学旅行で旅館の窓から見た、町のネオンだった。
 視力を失うにつれて友だちと遊べなくなった著者は、自分のことを誰も知らない街に行きたいと熱望し、筑波大学附属盲学校(現筑波大学附属視覚特別支援学校)の中学部に進学する。


 中学2年となった著者は、ある日、学校の図書室に行く。夏休みの読書感想文を書くのに適当な本を探すためだ。
 そこで著者は、運命の一冊と出会う。それが、弁護士・大胡田誠誕生への第一歩だった。
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 1ページめから最終ページの最後の行まで、とにかく圧倒されっぱなしの一冊だった。
 
 弁護士となるべく、全盲の学生を受け入れてくれそうな大学を探し、司法試験予備校を探し、受験方法を探り、試験に何度落ちてもあきらめずに立ち向かい・・・さらに弁護士になってからも、視覚面が重視される依頼については、あらゆる策をひねり出してクライアントの要求に応え、苦しんでいる人々の心に全力で寄り添う。
 さらに著者は、同じく全盲の女性と結婚し、子どもを育て、妻の社会復帰も支援する(しかも、フルマラソンを完走するランナーでもある)。

 ここまですごいと、正直に言って「生まれつき能力の高いスーパーマンなのだろう」と白けてしまいそうだ。しかし著者のスーパーマンぶりは、逆に人を猛烈に熱く、そしてじんわりと温かくさせる。

 その理由のひとつは、本書のなかで繰り返し語られる、こんな言葉だ。 

「もう無理かもしれない」と思った、その少し先にゴールがあったような気がする。

 これは、幼少時から家族で山歩きを楽しんできた著者が、その経験から語った言葉だが、そんな強靭な精神力と軽やかなフットワーク、不可能を可能にしようとする前向きな心、そして社会の役に立ちたいという熱意が、周囲の者の心を熱く、そして温かくさせるのである。

 かといって、著者の生き方は単なる根性論ではない。
 冷静に自分の強み・弱みを分析し、いかに少ない労力で目の前の壁を突破するかをきっちりと考えている。
 その対策の練り方・根本的な考え方は、一般の受験生と変わらないので、進学や資格試験を控えている人全般に役立つものであろう。



 さて、こう書くと、私は大胡田氏の奮闘に感動したと思われるかもしれないが、実は最も泣いた部分はちょっと違う。

 著者が大学に入学し半年経った頃、ある教授が著者にこう言う。 

「ある学生から、君が点字でノートをとる際の音がうるさくて迷惑していると苦情が出ている。だからそこではなくて、ほかの学生がいない隅の方に座りなさい」

 大教室のなか、100人近くの学生の前でそう言われた著者は、驚きと恥ずかしさで思わず涙をこぼす。

 しかしその瞬間、著者をもっと驚かせるようなことが起こる。

 この出来事は、著者が一生忘れられない思い出となったという。
 そして私も、このエピソードは生涯忘れられないものとなるだろう。

 著者の母親は、 

「人生で迷ったときには、自分の心が『温かい』と思う方を選びなさい」

 と語ったというが、これを咄嗟に実践できる人がたくさんいるという事実に、私は涙が止まらなくなった。人間とは何と素晴らしいものなのか。

 本書は、障害者が苦労をして夢をつかんだ話ではない。障害の有無をはるかに超えた、あまりにまぶしい人間賛歌だ。
 この本に出合えて、本当に、本当に良かった。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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