日本のいちばん長い日 半藤一利

大日本帝国の最後は近づいていた。ほとんどすべての日本国民はラジオの前に集り、そのときのきたるのを待ちつづけた。真ッ赤な太陽は真上にあった。(本文引用)
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 今年8月、映画「日本のいちばん長い日」が公開される。
 本書はその原作だが、読めば成程、日本にとってこれ以上長い日は、後にも先にもあるまいと納得できる。

 1945年8月14日正午からの24時間、日本の中枢は何を思い、何を話し、何を決断したか。

 これは、日本の歴史を語るうえで絶対に忘れてはならない一日を、克明に写し取った記録である。
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 このドキュメントで個人的に興味深いのは、放送員の様子までもが詳しく書かれている点だ。

 「終戦の詔勅」(玉音放送)までの記録なのだから、当然といえば当然だろう。しかし、急転直下の事態での放送員の対応からは、「その日」の空気が熱風のように伝わってくる。
 なかでも、若い兵士に拳銃を向けられながらも、真っ当な放送を死守しつづけた放送員の様子には息をのむ。

拳銃を前に、たとえ殺されても、狂気の軍に放送局を自由にさせてはならないだろうと思った。

 ポツダム宣言受諾に反対する青年将校らが放送局を占拠しようとするのを、命がけで制止する放送員。一触即発ともいえる状況下で、「警報発令中は、どんな放送もできない」と己の使命を全うしようとする放送員。
 そんな彼らの姿には、激しく心を揺さぶられる。と同時に、戦争終結の裏に、こんな“もうひとつの戦い”があったのかと驚かされる。

 また一方で、放送を聴いていた市民の心情も見逃せない。
 8月15日の7時21分、放送員は慎重に言葉を選びながら、重大な予告をする。当時、それを聴いていた作家らは、その時の驚きと不審の念を生々しく日記に残している。これほどまでの心の乱れは、当時実際に戦争を経験した人にしかわからないものであろう。

 戦争とは何なのか。戦争を終わらせるとは何なのか。そして、いちばん大切にしなければならないものは何なのか。
 1945年8月14日正午からの24時間には、その全てが詰まっている。
 独のワイツゼッカー元大統領の言葉「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目」ではないが、本書を読むことは、現在と未来を見つめることに直結するだろう。

 8月15日が近づくたびに、思い出したい、読み返したい一冊である。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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