歴史は「べき乗則」で動く マーク・ブキャナン

地震は、起こりはじめたときには、自分がどれほど大きくなっていくか知らない。地震に分からないのなら、我々にも分からないだろう。
(本文引用) 
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 箱根山で火山性地震が続いている。
 それに伴い、「蒸気の噴出が突発的に起きる恐れがある」として、大涌谷付近は立入禁止になっている(日本経済新聞2015/5/6朝刊より)。
 ゴールデンウィークに閉鎖というのは、観光地としてはたいへんな痛手であったろうが、やむを得ないだろう。

 しかし、もしこの本を読んでいなかったら、傲慢にも私は「まだまだ大丈夫」「閉鎖するなんて大げさな」などと甘く考えてしまっていたかもしれない・・・。
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 本書では、理論物理学の観点から、歴史的大事件が起きる共通項を解説していく。


 それだけ聞くと何ということもなさそうだが、この理論の凄いところは“ジャンルを問わない”こと。地震、山火事、種の絶滅、戦争、株の暴落等々、人為的なものからそうでないものまで全て、バックグラウンドには驚くべき類似性があるという。
 
 そのキーワードとなるのは、「臨界」だ。
 著者は、砂山に一粒ずつ砂を落とすという実験を通じ「何らかの不安定さ」→「蓄積される歪み」→「臨界」→「突然の破壊」というパターンを見出していく。さらにそのプロセスは地震も山火事も戦争も恐慌も同じであるとし、世界は私たちが思っている以上に不安定であり、いつ臨界が来てもおかしくない、いや、今すでに臨界状態にあるのかもしれないという事実を突きつける。
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 本書を読んでいると、学校で習ったことがどんどん疑わしく思えてくるから面白い。
 第一次世界大戦の原因は、サラエボでオーストリア皇太子が暗殺されたことと言われているが本当か?
 あの革命の旗手は●●と言われているが、本当に●●が主導したといえるのか?
 あの大地震は××が原因と解説されているが、それは後付けではないのか?
 
 本当は誰にも原因などわからず、本人にもわからないかもしれないのに、まるで起こるべくして起こったかのように私たちは習っている。それを丸ごとひっくり返すような著者の主張は、本書裏表紙にも書かれているように、実に“スリリング”だ。

 と同時に、今、自分のいる世界の存在が危うく思えてくるから恐ろしい。
 明日にでも戦争や大規模なテロ、金融恐慌、天変地異が起きてもおかしくない。どんな一粒の砂が世界を崩すかもわからない。そもそも、今「平和である」「安全である」などと、誰が断言できるだろう?本書のページをめくるごとに、そんな恐怖が全身をかけあがってくる。
 
 地震も種の絶滅も戦争も株暴落もいっしょくたに考えるというのは、やや乱暴に思えるかもしれない。
 しかし、そのいずれもが予測不可能なほど大規模な犠牲を出し、さらにその失敗を幾度となく繰り返していると考えると、著者の説は決して馬鹿にできないのではないか。


 箱根山の火山性地震への対応も、慎重を期するに越したことはないだろう。 

「あらゆる種類の予測のなかで、『ある原理的に起こりうる出来事が、実際には決して起こらないだろう』とするたぐいの予測ほど、明白に誤りだと分かり、人々を強烈に裏切るものはない」

 (本書内ピーター・メダワー氏の言葉より)

 何とか安全に、事態が収束するのを願わずにはいられない。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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