問いかける教室 ~13歳からの大学授業 桐光学園特別授業Ⅵ~

「夢なき者に 理想なし
 理想なき者に 目標なし
 目標なき者に 達成なし
 達成なき者に 喜びなし」

(冨田勝氏のメッセージより)
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 先日紹介した「科学は未来をひらく」が面白かったので、その関連本として購入してみたのだが、いやもう、すごい。
 そのすごさに気づいたのが第Ⅵ巻というのが、非常に悔しい。よって、これから少しずつ買いそろえていくつもりである。全てそろえたら、家宝にしよう。

 これは桐光学園で開かれている「13歳からの大学授業」をまとめたもの。各分野のスペシャリストたちが、「大学の学びとは何か」「学問とは何か」を中高生に伝えていくものだが、どれも独自性と深遠さに満ちている。
 「何かを成し遂げたい」という夢をもつ若者たちにとって、これほど素晴らしいプレゼントはないだろう。なぜなら、「何かを成し遂げた」スペシャリスト自らが、スペシャリストたる所以を、身を以て教えてくれているのだから。


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 この授業がカバーする分野は、実に幅広い。数理科学から源氏物語、産業革命やイモリの再生、クラシック音楽から「便所めし」現象まで網羅されている。
 それら各分野の専門家20名が、自身の研究について真剣勝負で語っていくわけだが、そこから見える「彼らの生き方」には心底シビれる。

 まず「思考の整理学」でおなじみの外山滋比古先生は、「人間性は失点部分にこそ表れる」と語る。
 100点の答案はコンピューターにも書けるけれど、25点分間違えた、75点の答案は人間にしか書けないと言う。
 そこから「今後、人間に求められる能力」を解説し、そのような能力、といおうか「脳力」を身につけるための方法を具体的に示していく。
 この授業は本書の第1講なのだが、いきなりアッパーカットをお見舞いされたような衝撃があった。ただひたすら机に向かって勉強している学生たちにとっては、コペルニクス的転回といえるものであろう。
 テストの点数に悩んでいる人や、真に学力を伸ばしたい人にとっては、必読の内容である(単純にテストの点数を伸ばしたい人にとっては、読まない方が良いかもしれないが)。

 第5講、福井憲彦氏による「『産業革命』を通して、歴史の見方・考え方を学ぶ」も面白い。
 学校で誰でも習う「産業革命」だが、その背景や側面をつぶさに見ていくことで、人間の来し方行く末が鮮明に見えてくる。

 私はこの解説を読み、ある絵本を思い出した。それは、ウルグアイのムヒカ大統領の演説を描いた絵本「世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ」である。
 ムヒカ大統領は、「貧乏とは少ししか持っていないことではなく、無限に欲があり、いくらあっても満足しないことです」と語り、人間の生き方を見直す必要性を提唱している。
 そして福井氏は、産業革命が起こした現象をこんな言葉で表している。 

「欲望の解放と市場の拡大」

 産業革命は、ただ産業を変えたわけではない。人間の内にある何かを変えてしまった。この授業からは、そんな「歴史の見方」を知ることができる。


 このように、どの講義も「今まで考えたこともなかった視点」というものに気づかせてくれるのだが、個人的に最も新鮮だったのは菊地成孔氏の「ポップ・アナリーゼのすすめ」だ。
 菊地氏は、本職であるポップ・ミュージックや家業である料理、そして音楽を担当したサッカーをとりあげながら、「物事の把握や鑑賞」について解説していく。それは4階層に分けられるのだが、この「ジョハリの窓」のような構造にはハッとさせられる。
 この4階層に基づいて、自分の仕事や趣味、友人や家族との価値観の違い等をとらえ直していくと、驚くほど「世の中」がクッキリハッキリと見えてくる。

 なぜ皆はこの話題で盛り上がっているのに、私は今一つ楽しめないのか。なぜ私は単純に喜んでいるのに、あの人は物言いをつけるのか。

 自分が触れている1つひとつの物事に対し、この4階層を慎重に当てはめていくと、霧が晴れたように、その答が見えてくる。
 そして最後に、より人生を楽しく豊潤なものにするためには、どの階層に自分を持っていけばよいかを、菊地氏は伝授する。
 これはもう、目から鱗が落ちて落ちて止まらないほどだ。なぜ今まで気づかなかったのか、これに気づいていたらもっと人生が豊かになったのに・・・と口惜しくてならない。このようなメソッドを、ごく若いうちから聴くことができる桐光学園の生徒たちが心から羨ましい。

 前述したように、本講義は「生徒たちに本当の学びと大学に進学する意味を知ってもらうため」に行われたものということだが、そんな枠は取り払って、できるだけ多くの人に読んでいただきたい。
 生きることを諦めない限り、心に響くものが大いにあるはずだ。

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アコチム

Author:アコチム
反抗期真っ最中の子をもつ、40代主婦の読書録。
「読んで良かった!」と思える本のみ紹介。
つまらなかった本は載せていないので、安心してお読みください。

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